「人の笑顔が見られると力がわいてくる」。そう語るのは、国内避難民が集まるコロンビア・メデジン近郊のアヒサル地区に住むカミラ・ベタンクル・ロンドニョ(24)さんだ。彼女はここに逃れる前、父や知り合いをゲリラ兵に殺された過去をもつ。アヒサルに避難してきた後はうつ病を発症。人生に希望を見出せなくなっていたが、チャリティー活動にかかわったことをきっかけに前向きに生きられるようになったという。
父を殺され極貧生活
カミラさんは、コロンビア北部の町プエルトバルディビアで生まれた。両親、姉4人、弟1人に囲まれた賑やかな家庭で育った。
彼女が8歳のとき、左派ゲリラのコロンビア革命軍(FARC)の奇襲を受け、父を殺された。
18歳のとき、FARCの兵士が再び町に現れた。彼らは住民全員を家の外に整列させ「ルイスは誰だ? 名乗り出ないと、みんな殺すぞ」と銃口を突きつけて脅迫した。名乗り出たルイスさんは裏に連れていかれ、頭を撃ち抜かれた。
ルイスさんは、カミラさんが幼いころから仲良くしていた友だちの父だった。FARCにとって許せない密告者だったという。カミラさんは「銃声を聞いた瞬間、(恐ろしいという感情がわくよりも、頭が真っ白になって)何も考えられなかった」と振り返る。
身の危険を感じたカミラさんの一家はその後、町を出る。国内避難民およそ12万人が住むコロンビア北西部のカウカシアへ逃れた。生活は安全だったという。
ところが次は家庭内で問題が発生した。まず4人の子どもをもつカミラさんの姉がシングルマザーに。気性が荒い弟は暴力を振るうようになった。一家の収入はわずかで、極貧生活を送っていた。
「家族が大変なのに、自分は何もできない」。カミラさんは自分に不甲斐なさを感じ始めた。家族の前で涙を見せることが恥ずかしかったので、寝る前に毎晩、ベッドの上で泣いた。