自宅の屋上で補習校! ダカール貧困地区の子どもに無料で教育を届ける男性がいた

マーシーハウスの授業の風景。奥の赤い帽子を被る男性がトールさん。子どもたちは積極的で、筆者も英語で質問攻めに

セネガルの首都ダカール近郊のピキン県に住むカリル・トールさん(32歳)は、自宅の屋上に作った教室で平日の夜6時から8時まで、10~15歳の子どもたちに無料で勉強を教えるソーシャルスクールを運営する。「給料アップを求めて教師がストライキをするので、学校の授業はひんぱんになくなる。お金のある家の子どもは塾に行く。僕はお金がない子どもに教育を届けたい」とトールさんは語る。

英語・数学・フランス語

このソーシャルスクールの名称は「マーシーハウス」(慈悲の家)。トールさんの自宅の屋上の一角を腰ほどの高さの壁で区切った中にある。屋根はトタン張り。アフリカらしい鮮やかなオレンジの布が窓とカーテンの代わりだ。木製のテーブルと3人がけの長いすが4列並ぶ。

マーシーハウスに通う子どもは現在20人。取材で訪問した時は13人の子どもが詰めて腰かけ、英語の授業を受けていた。

授業があるのは週4日。科目は英語、数学、フランス語の3つ。月曜日は数学2時間、火曜日は英語2時間、水曜日は休みで、木曜日はフランス語2時間、金曜日は英語と数学を1時間ずつ勉強する。

「日常的に触れる機会の多いフランス語(セネガルの公用語)よりも、英語と数学に時間を割く」とトールさん。ピキン県ではほとんどの子どもが母国語のウォロフ語を日常的に話すが、小学校から大学までの教授言語はフランス語だ。

講師の質にもこだわる。英語はトールさん自らが教壇に立ち、数学とフランス語はそれぞれ講師を1人ずつ雇う。トールさんが求める条件は、その科目の教員免許を持ち、また実際に指導経験があること。インターネットで募集をかけるが、条件を満たす講師を見つけるのは難しいという。「責任感がない講師もいる。ドタキャンした講師はクビにしたこともある」と話す。

マーシーハウスの外観。教室の後ろ半分はヤギ小屋になっている。ヤギを別の場所に移し、教室を広くするのが目標だ

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