
「つながる世界~パレスチナの子どもたち 写真展+絵本作家の絵画展」を、イスラエルの攻撃でパレスチナ自治区ガザの死者が5万人を超えたことに心を痛める絵本作家20人が6月10~15日、京都市内で開催した。企画した絵本作家の吉田尚令さん(53歳)は「パレスチナ問題を知らない来場者も多かった。そんな人たちにも自由に感じ取ってもらいたかった」と語る。国際協力NGOの日本国際ボランティアセンター(JVC)も全面協力した。
小学校で牛乳を配っていたら犠牲に
会場に入ってすぐ目に飛び込んできたのが、20年以上にわたってパレスチナで支援活動をしてきたJVCが撮りためた24枚の写真だ。子どもたちの笑顔、母親の慈しみに満ちたまなざしは日本人となんら変わらない。
人が写っていない唯一の写真が、がれきの中に混じった「破裂したミルクパック」を撮った一枚だ。これだけでは何かわからない。説明文によると、避難所になっていたガザの小学校で2024年10月、JVCのパートナー団体のスタッフがミルクパックを子どもたちに配っていたとき、イスラエル軍が空爆。スタッフ2人を含む少なくとも28人が犠牲となった。亡くなったスタッフはまだ24歳と28歳だったという。
命の危機にさらされているのはガザだけではない。イスラエルが占領するパレスチナ自治区ヨルダン川西岸でも、多くのパレスチナ人が日常生活を抑圧されている。
象徴的な一枚が、ヨルダン川西岸のヘブロンにある建物のベランダから笑顔をのぞかせる男の子を撮ったもの。平和な日常の一コマに見えるが、説明文には「イスラエル人の入植を受けてゴーストタウンと化した町では、建物の上の階から入植者がビールびんなどを投げてくる。このためパレスチナの子どもたちは室内でしか遊べない」と悲惨な現実が書かれている。
4日しかなかった双子の赤ちゃんの命
JVCが展示した写真の奥に進むと、酒井駒子さんや田島征三さんら20人の絵本作家が描いた22点の絵が飾ってあった。「天井のない牢獄」といわれるガザで、自由を求めてたこ上げをする子どもの姿も。また、「見てください。目をそむけないで。スルーしないで‥‥」といった作家のメッセージも絵に添えられていた。
双子の赤ちゃんを抱いて微笑む夫婦の絵もあった。説明文によれば、生後4日の双子の赤ちゃんと母親がイスラエルの攻撃を受けたガザで命の奪われた。出生届けを出すために役所を訪れていた時に父親は家族の死を知らされたという。
吉田さんはこれをニュースで知り、「せめて絵の中だけでも家族で幸せに過ごしてほしい」と願い、絵を描いた。
京都市内で今回開かれた写真・絵画展には6日間でおよそ700人が来場した。今後は東京や広島、福岡などを巡回する予定。最新情報は「つながる世界」のXアカウントで随時更新される。

オリジナルポストカードの販売益は運営費を除きすべてJVCのガザ緊急支援基金に寄付される

JVCのガザ駐在スタッフあてのメッセージボードには来場者からのメッセージがびっしりと貼られていた