ベナン国営テレビを占拠しクーデター未遂を起こした反乱兵士。憲法を停止し、国境をすべて封鎖したと発表した(写真出典=ロイター)アフリカで最も安定した民主主義国家のひとつといわれるベナンで12月7日、クーデター未遂事件が起きた。ベナン軍兵士数人が最大都市コトヌーにあるパトリス・タロン大統領の邸宅を襲撃。また国営テレビ局を占拠し、「タロン大統領は失脚した」と宣言した。その数時間後、ベナン政府からの要請で西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)のナイジェリア軍が反乱軍を鎮圧した。
反乱軍の兵士らは「われわれは、ベナン北部でジハード主義者(イスラム勢力)との戦闘で死亡した兵士と家族を政府が見捨てたことを非難し、憲法を停止する」と主張した。
トーゴ、ブルキナファソ、ニジェール、ナイジェリアとの国境を接するベナン北部は、ジハード主義者から度重なる襲撃に見舞われ、2025年4月には54人のベナン軍の兵士が死亡した。
ナイジェリア、シエラレオネ、コートジボワール、ガーナで1975年に設立されたECOWASの対応は迅速だった。7日の午後、ナイジェリアから3機の戦闘機と地上兵を投入し、ベナンの反乱軍の拠点を空爆。その後、ベナンのアラサン・セイドゥ内務相がクーデター未遂を阻止したと宣言した。コートジボワール軍も7日遅くにベナン入りしている。
ベナン政府の声明によると、ベナン軍の高官2人が誘拐されたが、すでに解放された。またクーデター未遂にかかわった兵士・元兵士14人は逮捕した。反乱軍とベナン軍の双方に死傷者が出たが死者数は不明。
今回のクーデター未遂は、11月26日にギニアビサウでのクーデターに続き、ECOWAS域内で2週間以内に起きたもの。西アフリカでは2020年から5回のクーデターが起き、軍事政権が誕生している。
ベナンでは2026年4月に大統領選挙が控える。タロン大統領は憲法に基づく最後の任期を終える予定だが、反乱兵らは、主要野党「民主連合」が選挙プロセスから排除されたことにも不満を表明していた。
コトヌーから100キロメートル離れたアボメカラビ在住のganasが主催する「アフリカ流フランス語教室」のベナン人講師は「ティックトックで初めて知ったときはフェイク情報だと思った。ここは平穏で日常生活に支障は感じていない」と語る。

2026年4月に実施されるベナンの大統領選挙で10年の任期を終え退任する予定のパトリス・タロン大統領(写真出典=ロイター)














