米軍に拘束されたマドゥロ大統領。写真は米ABCニュースから引用モンロー主義の復活
2つめの視点は「国際政治」です。
トランプ大統領の介入はやりたい放題との批判もあります。別の言い方をするなら、米国は欧州に干渉しないからアメリカ大陸についても欧州は干渉しないという「モンロー主義」の復活です。
ラテンアメリカは一昔前まで「米国の裏庭」と呼ばれていました。しかし近年はラテンアメリカでも中国の影響は拡大し、米国にとって脅威は増すばかり。
なかでもベネズエラは1999年以来、反米左派の筆頭の国。中国の影響を食い止めたいという思惑もトランプ政権には当然あったでしょう。
とはいえもちろん、他国を攻撃、国家元首を拘束といった強硬的なやり方が良いわけありません。
ではマドゥロ大統領が自発的に去るのを待つべきだったのでしょうか。マドゥロ大統領のボスだったチャベス氏(2013年に死去。その後を継いだのがマドゥロ氏)から数えてすでに27年――。理想的な解決を追求するにはあまりに長い年月が過ぎました(パレスチナはもっと長いですが)。平和的な理念か、ベネズエラ国民の生活(人生)か、選択肢はひとつしかありません。
武装組織なしで独裁者を倒せるか
3つめの視点は「他国との比較」です。
わかりやすい例のひとつがミャンマーです。主なポイントは2つあります。
1つめのポイントは「武装組織の有無」。ミャンマーでは軍事クーデターが2021年に起きて以来、軍政と民主派勢力が戦闘を繰り広げています。
ミャンマーではもともと、連邦制の実現や自治権の拡大などを求める少数民族が軍事部門(武装組織)をもち、中央政府との間で内戦がありました。これはつまり、少数民族が民主派勢力についた時点で、民主派勢力は武力で戦えることを意味します。
これに対してベネズエラはどうか。反政府(野党、民主派)勢力は武装組織をもちません。キューバやニカラグアをみてもわかるとおり、左派政権は武力をもって右派政権を倒し、政権に就きました(独裁化していく)。その後は当然、国軍も牛耳るので、反政府側に武装組織は残りません。かといって武装組織をいまから立ち上げるのは至難の業。「テロ」のレッテルを張られます。
例外は中東や一部のアフリカです。2010年から始まった民主化運動「アラブの春」でリビアのカダフィ政権が崩壊。リビアにあった大量の武器が略奪、流出したことで、周辺国に拡散されました。これがマリやニジェール、シリアなどでテロや紛争の激化につながったといわれます。ラテンアメリカでこうしたことは起きていません。
つまりベネズエラは非武装の民主派だけではどうしようもない、外部からの攻撃抜きでは変わりようがないところまで追い詰められていました。
ちなみにベネズエラで左派政権を樹立したチャベス氏は、国軍の中佐だった1992年にクーデターを試みたものの失敗、投獄されます。釈放後の1999年の選挙で勝ったのです。意外な事実。「民主主義が民主主義を壊した」わかりやすい例のひとつです。
2つめのポイントは、トランプ政権はなぜ、ミャンマーの軍政を攻撃しないのか、という点。この質問(願望)は実はミャンマー人からもらいました。
米国は全人口の2割近くが移民です。これに加えて不法移民も多数。数だけ見れば昔からメキシコ人が最多ですが、近年急増しているのはベネズエラ人。
極右のトランプ政権からすると、移民を何とかしたい。さもないと支持基盤を失うことにもつながりかねません。犯罪歴のあるベネズエラ人を中米エルサルバドルの大型刑務所CECOTに移送したり、米国への入国を厳しくしたり、といった対策をとってきました。ですが言わずもがな、元凶はマドゥロ政権です。ここを何とかしない限り、どうにもならないといった事情もあったことでしょう。
翻ってミャンマー。ミャンマー人は米国に多数押し寄せていません。加えて米国にとってミャンマーは遠い彼方のアジアの国。トランプ大統領にとっては関心も利害関係も薄いため介入する気はないと想像できます。














