米軍に拘束されたマドゥロ大統領。写真は米ABCニュースから引用パレスチナと同一視するのはおかしい
もうひとつ、パレスチナとの比較。トランプ政権は反パレスチナ・親イスラエルを異常なレベルで掲げています。これと同じ文脈で語るツイートもありました。つまり、パレスチナへの攻撃とベネズエラへの攻撃を同一視しているわけです。
ですがベネズエラとパレスチナの状況はまるっきり違います。ベネズエラ政府いわゆるチャビスタ(故チャベス大統領の支持者)とベネズエラ国民の間には大きな乖離があります。これまでの選挙をみても、野党候補を締め出したり、選挙結果を明らかに捻じ曲げたり‥‥ベネズエラ政府はベネズエラ国民を代表していません。むしろ「真逆」です。
ズバリ言うと、ベネズエラ国民はマドゥロ政権に倒れてほしい。これが悲願です。だからこそ、マドゥロ大統領を追い出してくれたトランプ大統領を支持します。嘘だと思うのなら、ベネズエラ国民(政府関係者と政府の甘い汁を吸っている人以外)に聞いてみてください。
ただ戦争になることはベネズエラ人も恐れています。ベストは「平和裏な政権移行」というのは言うまでもありません。
マドゥロ大統領さえ消えれば解決か
4つめの視点は「今後」です。
マドゥロ大統領の拘束を受け、ベネズエラではデルシー・ロドリゲス副大統領が大統領になると宣言しました。
デルシー・ロドリゲス氏は「ベネズエラ国民の尊厳を守る。降伏しない。どこの植民地にもならない。ベネズエラに対して(米国が)行っていることは野蛮だ」と口では素晴らしいことを言っています。
ただ現実としてベネズエラ国民のほとんどはマドゥロ政権の崩壊を強く望んでいます。だれもデルシー・ロドリゲス氏を支持していません。
マドゥロ政権とは「チャビスタ」を指します。その代表格が、マドゥロ氏(大統領)、デルシー・ロドリゲス氏(副大統領)、その兄のホルヘ・ロドリゲス氏(国民議会議長)、ディオスダード・カベージョ氏(内務相)、パドリノ・ロペス氏(国防相)らです。
さまざまな報道によると、デルシー・ロドリゲス氏はマドゥロ大統領を米国に売ったとか、米国の要求をのんだとかありますが、チャビスタの中心人物をすべて排除しない限り、ベネズエラはおそらく変わりません。
またベネズエラではいま、路上で、軍隊に入るよう呼びかけが始まったとのこと。路上に出るのはこのうえなく危険。国内にとどまるベネズエラ人は家の中で身をじっと潜めています。「食べ物が家にほぼない。どうしよう」といった声も聞かれます。さらに、チャビスタに去ってほしい半面、トランプ政権が再度攻撃し、戦争に巻き込まれることに恐怖を感じています。
対照的に国外のベネズエラ人らは喜びを爆発させています。
最後に、米国はベネズエラの「石油」を狙っている、との指摘について。米国はいまやシェールオイルを大量に生産し、エネルギー輸出国となったため、かつての状況とはかなり違うと思います。ただチャベス政権のときに「資源ナショナリズム」の名目で米国の石油企業が接収された歴史もあるので、それを取り返したいとの思惑はあることでしょう。
石油の問題を「ベネズエラからの視点」でみてみます。ベネズエラの石油生産量は劇的に落ちていて、2020年にはイランから石油を輸入したほどです。ガソリン代も1リットル2ドル(約300円)と日本より高い(政府の補助金が入ったガソリン価格は同50セントですが、この価格で手に入れられるのは事実上、マドゥロ政権に近い一部の特権階級だけ)。
「ベネズエラの石油はどうせ中国に持っていかれている。だからその仕向け先が米国に変わるだけ。しっかり交渉してほしい」とはベネズエラ人の弁。
トランプ大統領は「ベネズエラの政権を、マドゥロ政権から移行させるまで米国が運営する」と発言しています。まだまだ予断が許さないベネズエラ情勢。というか、ベネズエラがまともに戻るまでは10年単位の歳月が必要になるでしょう。今回の出来事を皆さんはどう読み解きますか。今後もぜひ注視してください。














