英雄か、石油泥棒か――トランプさん、いまが「あなたの運命」の分かれ道です

ベネズエラの石油産業は復活するのか。ベネズエラは確認埋蔵量では世界トップだが、生産量は20位と大きく落ちる

ベネズエラ情勢の雲行きが怪しくなってきた。米国のトランプ大統領は1月15日、ベネズエラの反体制派(民主派)リーダーで、ノーベル平和賞の受賞者マリア・コリーナ・マチャド氏と米ホワイトハウスで会談。だが報道を見る限り、ベネズエラ国民にとっての「成果」はなかったようだ。このままだとベネズエラの民主化は遠のくばかり。マドゥロ大統領の排除に歓喜したベネズエラ国民が見た夢は幻に終わるのか。

頼みの綱はトランプのみ

マチャド氏はトランプ大統領と会談した際、自身が受け取ったノーベル平和賞のメダルをトランプ大統領にプレゼントした。ノーベル賞委員会がその少し前に、「ノーベル平和賞は他人への譲渡も、他人とも共有できない」とくぎを刺したにもかかわらずだ。

マチャド氏が異様なまでにトランプ氏にゴマをするのはなぜか。ベネズエラ国民の心情を一言で代弁するならば、恐怖政治に終止符を打ち、民主化を実現したいからだ。武力組織をもたない反体制派にとって、1999年以来となる民主化を取り戻す頼みの綱はトランプ大統領しかいない。

だがトランプ大統領は、排除したマドゥロ大統領の後釜として、旧体制の幹部であるデルシー・ロドリゲス副大統領を「暫定大統領」として認めた。2024年7月の大統領選で圧勝したとされるエドムンド・ゴンサレス氏や、野党統一候補の予備選で9割以上の支持を集めたもののマドゥロ政権に出馬を禁じられたマチャド氏に政権を託す意思は本当に微塵もない。

デルシー・ロドリゲス暫定大統領に正統性がないのは、マドゥロ大統領と同様に明らか。それどころか、マドゥロ政権随一の実力者で、政府系暴力組織「コレクティーボ」を牛耳るディオスダード・カベージョ内務相、国軍をコントロールするパドリノ・ロペス国防相、デルシー氏の兄であるホルヘ・ロドリゲス国民議会議長ら、チャビスタ(故チャベス大統領の支持者=旧体制)の幹部はごっそり残ったままだ。

トランプ政権は選挙をいずれ実施するとしているが、この体制で公正な選挙が期待できないのは火を見るよりも明らかだろう。

「マドゥロ大統領と妻のシリア・フローレス氏(国民議会議長や法相などを歴任)の2人だけを排除しても意味がない。これでは何も変わらない。それどころか国内の状況はますますひどくなっている」。ベネズエラ国民の多くはこう声をそろえる。

またデルシー・ロドリゲス暫定大統領の「上に弱く、下に強い」二面性も醜くて見てられない。米国の意向に沿って石油産業の改革と協力を進める、とトランプ大統領へすり寄る。その裏で、マドゥロ大統領が拘束されたことを喜ぶ動画をSNSに投稿したり、メッセージを送ったりした一般市民を、正規の国軍・警察と残虐性で悪名高いコレクティーボが見つけ、逮捕し、最悪の場合殺す。

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