2022-08-23

【9/2取材報告会】ケニア大統領選の裏側で暗躍する「カネ」と「暴力」、キベラスラムで潜入取材した記者が語る

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「政治家は選挙で勝つために、ギャングを利用するんだ」。男は手を組みながら私にこう語りかける。

ここは、アフリカ最大のスラムといわれる、ケニア・ナイロビのキベラスラム。ganas記者の私(笹田健史)は2021年8月、このキベラスラムの北部にあるトイマーケットの一角で、あるケニア人の男の話を聞いていた。

彼の名前はチンジャ。麻薬や犯罪に染まるキベラの若者たちを更生する地元のNGO「キベラ・ユース・ユナイト・アゲインスト・クライム」の代表だ。

白と黒のおしゃれなシャツ。手首にはケニアカラーのビーズのブレスレット。小綺麗な装いと落ち着いた口調からは想像もできないが、彼も昔ギャングだったという。

だからだろう。チンジャは政治家に利用されるキベラの若者たちの思いを代弁した。

「若者は仕事がない。食べるものもない。生きていくのに精いっぱいだ。そんな時に政治家が、お金をぶら下げてやってくるんだ。奴らに選択の余地はない」

キベラのギャングたちはお金を稼ぐために政治家のいうことを聞くのだという。だが実際、政治家はどのように彼らを利用するのか。

「例えば、ある政治家が当選したいとする。そんな時は投票日当日、自分の地盤じゃないところの投票場にギャングを送り込んで、有権者を脅して投票をさせないようにするんだ」

なまじ信じがたい。民主国家と自負するケニアで白昼堂々とそんなことが行われているとは。だが治安組織である警察は何をやっているのか。

「警察が来たらこっちのものだ。ギャングたちは警察に投石をする。警察は催涙弾や、ときには実弾を使ってギャングを攻撃、鎮圧するんだ」

ではその後は、選挙は滞りなく続けられるのではないか? 私がこう尋ね返すと、チンジャは笑いながらこう答えた。

「さっきまで実弾が飛び交ってた投票場に来たいと思う有権者が何人いると思う。誰も来やしない。最悪その投票所は閉鎖。そこで投票しようとしていた何万もの人が投票できなくなる。それが政治家のねらいだ」

途上国の選挙は荒れると聞いていたが、内部でそのような意図が働いていたとは。ケニアでは「選挙」という民主主義の象徴のようなイベントの裏で、カネと暴力が渦巻いていた。

チンジャの話を聞いてから1年、私はまたナイロビを訪れた。8月9日に予定されている5年に1度の総選挙を取材するためだ。

ケニアでは過去15年にわたって選挙が荒れている。2007年には選挙戦が部族対立に発展。1000人以上が殺害され、60万人以上が国内避難民となった。2013年と2017年の選挙では、対立候補が最高裁判所に選挙結果の異議申し立てをし、2017年にはそれが認められて再選挙となった。

今年の選挙は過去約10年にわたって政権を担ってきたウフル・ケニヤッタ大統領は出馬できない。有力候補は、そのケニヤッタ大統領の副大統領として働いてきたウイリアム・ルト氏、そして野党のリーダーとして過去4度にわたって大統領選挙に出馬し、すべて落選したライラ・オディンガ氏。

BBCやアルジャジーラなどは、今年はかつてないほど接戦となると事前に言い伝えている。そんな中、候補者はギャングたちをどのように利用するのか? 彼らは当選するのか? そしてなにより選挙は安全に実施されるのだろうか?

私はこの1年越しの疑問を胸に、再びアフリカ最大のスラムに足を踏み入れた。

取材報告会の概要

今回の取材報告会は、私が7月から8月にかけて、ナイロビのキベラで行われた選挙がテーマです。

情報はすべて私が3週間、キベラを歩き回って関係者から聞いたものです。海外の大手メディアもカバーしていません。ましてや日本のメディアで選挙時にスラムに入っていたのは私だけでしょう。

そこでいったいどんな選挙戦が繰り広げられていたのか? 買収、脅迫、襲撃、キベラで起きた事件を、関係者の証言とともに明らかにしていきます。

なぜケニアの選挙はいつももめるのか?

なぜ部族闘争に発展するのか?

なぜケニアの汚職がなくならないのか?

なぜキベラは貧しいままなのか?

キベラの選挙戦を深く知ることにより、こういった疑問の答えが見つかるかもしれません。ぜひご参加ください。

*この取材報告会は厳密には、ganasが現在開講中の「グローバルライター講座」(次回は10~12月を予定しています)のアクティビティのひとつである「模擬記者会見」です。今回は特別に、受講者以外の方にも公開します。オブザーバーとしての参加となるため質問はできません。ご容赦ください。

笹田記者の報告のポイントを下に整理してみました。

①国を二分する大統領選挙の現状

ケニアの選挙は毎回もめることで有名です。2022年もルト氏の政党「統一民主連盟(UDA)」とオディンガ氏の政党連合「アジミオ・ラ・ウモジャ」の間で激しい選挙選が繰り広げられました。この戦いを通して、ケニアの部族関係、候補者の人物像、そしてキベラの立ち位置を解説します。

②キベラスラムの下院議員選挙の展開

ケニアの選挙は大統領だけでなく、上下両院議員、郡知事、郡議会議員のすべてを決めます。キベラは下院選の選挙区となっており、その議席をめぐり激しい戦いが繰り広げられました。有力候補3人を説明し、彼らのキベラの選挙戦を振り返ります。

③キベラの買収文化

「お金があったらかといって勝てるとは限らないが、お金がなければ絶対に勝てない」これは、今回の下院選挙に出馬した候補の言葉です。選挙時にお金を配ることは当選するためのもはや必要条件。この買収における現状と政治家の葛藤を紹介します。

④選挙時に暗躍するギャング、そして自警団の仕組みと政治家との繋がり

キベラのギャングや自警団は、政治家の道具です。彼らはどのように政治家に使われているのか?ギャング、自警団、被害を受けた支援者たちへの直接インタビューをもとに、その仕組みと影響を解説します。

⑤貧困に苦しむキベラと選挙時暴力の関係

ギャングや自警団が政治家に協力する背景には貧困があります。政治家とギャングたちの関係を糸口に、キベラの貧困の状況と、キベラを取り巻く負のサイクルを考えます。

⑥キベラの未来

貧困、買収、暴力が渦巻くキベラ。この負のサイクルはどうしたら改善するのか?この質問を、出馬した候補者やキベラ住民の協同組合会長にしてきました。彼らの答えから、どのようにしたら負のサイクルから抜け出せるのかを考察します。

会場

オンライン(Zoomを使います)

 *当日の2時間前までにZoomのURLをPeatixのアカウントにお送りします。ご確認ください。

登壇者

笹田健史(ganas記者)
1983年、岐阜県生まれ。名古屋大学卒。2006年より、青年海外協力隊員としてザンビアの女子高校で物理と体育を教える。その後、スポーツ科学を学ぶためアメリカに留学。以降、ストレングスコーチとしてタイのプロサッカーチーム、チェンライユナイテッドやラグビートップリーグのキヤノンイーグルス、関西学院大学や龍谷大学で働く。2018年にganasのプログラム「Globa Media Camp」に参加。以降、記者として活躍。代表記事に連載「キベラスラムで闘う人たち」、連載「ルポ・ミャンマーからの逃亡者を追う」がある。

日時

9月2日(金)20時~22時30分

<タイムライン(予定)>
19:50 開場
20:00 開始
20:10 取材報告「ケニア大統領選の裏側で暗躍する『カネ』と『暴力』、キベラスラムで潜入取材した記者が語る」(ganas記者 笹田健史)
21:00 質疑応答
*申し訳ございませんが、オブザーバー参加の方は質問できません。
22:30 終了

こんな方にお勧め

・ケニアの政治を深く知りたい人
・選挙に興味がある人
・スラムの人々の生活を知りたい人
・平和構築に興味がある人
・ケニアに遊びに行きたい人
・ジャーナリズムに興味がある人

定員

80人(先着順)

*定員に達した時点で締め切らせていただきます。

参加費

・一般:1000円
・学生:500円
ganasサポーターズクラブのパートナー/サポーター:無料

*オブザーバーとしての参加になりますので、質問はご遠慮ください(グローバルライター講座の受講者は記事を書きますので、「そのために必要な質問」を優先します)。
*キャンセルされても参加費は返金できません。ご了承ください。
*この取材報告会の収益は100%、笹田記者の今回のケニア取材費となります。大手メディアがカバーしない「途上国の情報」を発信するNPOメディアを応援していただけますと幸いです。
ganasサポーターズクラブにまだ入っていらっしゃらない方はこの機会にどうぞ。途上国に特化した非営利メディアganasの活動を単にサポートしていただくだけでなく、さまざまな特典(お得に学べたり、途上国に関心がある人同士で交流したりも)もご用意しています。

申し込み方法/締め切り

下のPeatixのページからお申し込みください。お申し込みはご入金をもって完了します。締切日は8月31日(水)。定員に達した時点で締め切らせていただきます。

URL: https://peatix.com/event/3339310/view

主催

特定非営利活動法人開発メディア(ganasの運営団体)

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