国際機関の日本人職員はわずか765人、「キャリアを計画的に構築」すれば夢はかなう

開発に関心をもつ在英日本人学生が運営する非営利団体「英国開発学勉強会」(IDDP)と日本の外務省は2月24日、在ロンドン日本クラブで、一般公開セミナー「国際機関就職ガイダンス」を共催した。講師は外務省在ジュネーブ国際機関日本政府代表部の本田英章氏ら。本田氏は、国際機関で働く日本人が少ない現状を指摘し、ロンドンに留学中の日本人学生に、国際機関に積極的に応募してほしいと呼びかけた。

国際機関は100以上ある。専門職として働く職員は3万人を超える。ところがこのうち日本人は765人(2012年)しかいない。過去10年で少しずつ増えてはいるものの、日本人職員の割合は現時点でわずか2.5%だ。

米ニューヨークの国連事務局に限ってみると、国連は、日本人の「望ましい職員数」を202~273人と算定している。だが実際の日本人職員数はその4分の1程度の60人(2012年)にとどまっている。

望ましい職員数とは、国連憲章101条3項が定める「衡平な地理的配分の原則に服するポスト」(「国連人事について」22ページ)に基づくもの。国連への拠出金分担率や人口などで算定する。

■カギは「学歴」「職務経験」「語学力」

日本人職員はなぜ少ないのか。その理由について本田氏は「国際機関の採用プロセスが日本のそれと大きく異なるため」と説明する。

違いのひとつは採用方法だ。日本の多くの企業は、すべてのポストの人材を就職活動の時期に一括採用する。だが国際機関はポストごとに採用し、人員やポストに空きがなければ応募そのものができない。

もうひとつの違いは、国際機関が求める人材は即戦力ということ。日本の企業は社員教育を重視するが、国際機関の採用では、応募者が空席ポストに適したバックグラウンドをどれぐらい兼ね備えているかが厳しく問われる。

特に注目されるのは「学歴」「関連職務の経験」「語学力」の3つだ。学歴は修士号が条件であることが多く、語学も英語に加えてフランス語が求められるケースは少なくない。

こうした採用基準の高さから、有望な日本人さえ、国際機関への応募に尻込みしてしまう現実がある。だが本田氏は「キャリアを計画的に構築する努力をすれば、国際機関に就職する道は開ける」と強調する。

■UNHCRの日本人職員の85%はJPO経験者

国際的キャリアを積むにはどうすればいいか。ひとつの方法に「ヤング・プロフェッショナル・プログラム」(YPP)がある 。これは、国連事務局が「望ましい職員数に届いていない国」(現在76カ国ある)を対象に実施するプログラムで、32歳以下の学士号取得者で英語かフランス語に堪能であれば応募できる。合格すれば、国際機関で2年の経験が積める。

日本もYPPの対象だが、日本人合格者は2011年、12年と2年続けてゼロ。面接でのアピールが控えめな日本人にとって、外国人の応募者と競争するのは難易度が高いのかもしれない、と本田氏は言う。

外務省の「ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー」(JPO)という制度もある。これは、日本政府が経費を負担し、日本人を国際機関に2年派遣する仕組み。35歳以下の日本国籍保持者が応募できる。応募するには、英語力に加えて、修士号と2年以上の職務経験が必要だ。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の日本人職員の85%、国連児童基金(UNICEF)では77%がJPO経験者という。

このほか、国連ボランティアや在外公館の専門調査員、各国際機関でのインターンなども、国際的な勤務経験を積むには有用だ。

国際機関に就職するまでの道のりは決して短くない。それだけに本田氏は「入りたい国際機関の職種やポストを具体的に定め、逆算し、自分に足りない学歴や経験を着実に積むことが必要だ」と講演を締めくくった。(ロンドン=吉田沙紀)