TICAD Vでアフリカの貧困が悪化する可能性も、オックスファムが懸念

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第5回アフリカ開発会議(TICAD V)で採択された横浜宣言と行動計画は、アフリカ大陸の不平等と貧困を悪化させかねない――。国際NGOオックスファム・ジャパンは6月4日、マイナス影響を懸念する声明を発表した。今回のTICADは「マクロ経済成長と民間投資」を強く打ち出したが、この開発戦略によって、アフリカの貧困層が成長から取り残されるかもしれない、とオックスファムは指摘。TICAD自身が国際社会に訴えてきた「人間の安全保障」を損なう恐れがある、と述べた。

TICAD Vは商業的農業の推進を重要なポイントに掲げたが、対照的に、小規模農家が食料の生産方法について発言できないことや、必要な農業技術の習得を日本政府が支援しないことをオックスファムは批判。ドナー(援助国・機関)が主導する農業支援は、アフリカの農民の権利を奪い、生活の糧となる生態系を破壊する、と懸念した。

オックスファムはまた、日本、ブラジル、モザンビークの3カ国の政府が、モザンビークの熱帯サバンナを一大農地に変えようとする巨大プロジェクト「プロサバンナ」事業について、モザンビークの自然資源を搾取し、住民の食料安全保障を脅かす、と警報を鳴らした。

オックスファムは、「人間の安全保障」を中心とする枠組みの構築を目指すとしたTICADの姿勢は歓迎している。さらに、経済の変革に焦点を当てたこと、市民社会を開発のパートナーと認識している点も評価した。その上で、アフリカ開発のアフリカのビジョンを発展させるために、「より野心的な理念」と「アカウンタビリティ(説明責任)」を主要原則とすることを求めた。

オックスファムは、世界90カ国以上で貧困削減を目指して支援活動や政策提言をしている国際NGO。第二次世界大戦中、ナチス軍の攻撃で窮地に陥っていたギリシア市民に、オックスフォード市民5人が食糧や古着を送ったのが活動の始まりだ。