子どもに豊かな感性を! ヤンゴンの寺子屋教育は「心の成長」を促す

バイオリンを演奏する寺子屋の女子児童

ミャンマーの最大都市ヤンゴンのライン・ター・ヤー地区にあるサンダルラマ寺子屋では、ミャンマー語や算数などの一般教科に加えて、週に1回外部から専門の講師を呼び、音楽、絵画、シェークスピアの演劇、植物栽培などの体験学習を取り入れ、子どもたちの情操を育てている。

ヤンゴンの中心から、車に揺られること約1時間半。周りには竹で作られた高床式の質素な家が立ち並ぶ一角にこの寺子屋はある。日本で寺子屋というと、江戸時代に庶民の子どもたちが地元のお寺の中で少人数で読み書きソロバンを学んだ姿を想像する。

ミャンマー全土に存在する寺子屋は今も、様々な理由で公立校へ通えない子どもの初等教育の受け皿になっている。公立校にない特色をもつ教育で成果を上げているところもあるのが特徴だ。

サンダルラマ寺子屋では8月26日現在430人以上の子どもが学ぶ。想像をはるかに超える規模。12人の子どもを対象に、どんな夢をもって寺子屋で学んでいるのか聞き取りしたところ、14歳(6年生)の男子アウンココトゥンくんは「将来もバイオリンの演奏を続けたいです」と笑顔で、しかもはっきりとした口調で答えた。

医者や学校の先生など、ありがちな職業の夢が返ってくると予想していたが、良い意味で意外だった。部屋の一角にはバイオリンやギターが複数並べられていた。

それ以外の子どもも、「ギターの演奏を続けていきたいです」「においが好きなので、これからもスイレンの花の育て方を学んでいきたいです」「演劇を続けていきたいです」など、半数の子どもが芸術や植物栽培への強い思いを語った。

これだけでこの寺子屋での情操教育が成果を上げているとはもちろん言えない。しかし、芸術や体験活動が子どもたちの興味関心につながっていることは確かだ。

ミャンマーでは今、経済発展に伴い、より高い学力を求めて多くの子どもたちが塾通いをしている。だからこそこの寺子屋のような豊かな感性を育てようとする教育がもっと注目されるべきかもしれない。