女性の社会進出が進むミャンマー、男性の本音は「家庭に入ってほしい」

スタラティジー・ファーストに通う女子生徒たち。黒のエンヂーと赤いロンジーの制服を着て授業を受けるスタラティジー・ファーストに通う女子生徒たち。黒のエンヂーと赤いロンジーの制服を着て授業を受ける

「結婚するなら家庭に入ってほしい」。これは、ミャンマー・ヤンゴンで有名なビジネス塾「スタラティジー・ファースト」に通う十代の男子生徒の言葉だ。

ミャンマーは、女性の社会進出が進んでいる国のひとつとされる。世界銀行の2014年のデータによると、同国の労働参加率の男女差は7.5ポイント(女性72.4%、男性79.9%)と、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の中でも2番目に差が小さい。

スタラティジー・ファーストの女子生徒十数人に「結婚後も仕事を続けたいか」「女性が結婚後も仕事を続けることについてどう思うか」と質問したところ、全員が「結婚後も働き続けたい」と回答した。親が共働きというセンさんは「家庭のことはメイドを雇って任せたい。女性が仕事だけでなく家庭のことまで担うのは大変なこと」と話す。

対照的に男子生徒たちは女性が結婚後も働き続けることを肯定しているわけではない。「結婚するなら家庭に入ってほしい」「働くことは(女性にとっても)権利だから」「結婚する女性に任せる」といった声が大半を占めた。

「結婚するなら家庭に入ってほしい」という考えを持つタウィアさんは、仕事に打ち込む姉の影響がある。彼の姉は稼ぎが良く、結婚後も家庭のことはメイドに任せ仕事に打ち込んでいる。「仕事を優先する姉を見て自分はそのような女性とは結婚したくない」と思った。

男子生徒がこれらの回答をした背景には宗教やミャンマーの性別役割分担も関連している。ミャンマー人の85%が信仰する上座部仏教では、男性のみが出家して徳を積めること、女性を「不浄」な存在としていることから男性優位の思想だ。社会的慣習でみても、男性が世帯の収入や意思決定への責任を担う半面、女性は家事や育児を担当する性別役割分担が残っている。

女性の社会進出が進むにつれ、女性の晩婚化、未婚率が増加している。大和総研によると2000年の35~39歳のミャンマー女性の未婚率は18.6%。隣国タイの11.6%、女性の社会進出が進むといわれるフィリピンの9.5%を大きく上回る。さらに、世界銀行によるとミャンマーの女性が一生の内に生む子どもの数は、1970年の6.08人から2011年には1.98人減少し、少子化が始まっている。結婚後に女性が働き続けることに対する男女の価値観の違いがミャンマー女性の晩婚化、未婚率の増加を招いているのかもしれない。