ストライキをしたら即刻解雇!? ミャンマーで労使関係がうまくいかない理由とは

HirokaTakahashi②ラインタヤ地区キントゥトゥミェさんとカインピューピューさんが働く縫製工房があるヤンゴン市ラインタヤ地区

ミャンマーではストライキを起こして解雇されるケースが後を絶たない。ミャンマー・ヤンゴン市北部のラインタヤ地区にある台湾系の縫製会社ボガートは2014年、ストライキを打った従業員を解雇。従業員らは「解雇は違法だ」として経営側を訴えることで対抗したが、今度は経営側が「従業員は業務妨害をした」として逆提訴した。裁判は今も続く。

ラインタヤ地区の縫製工房で現在働くキントゥトゥミェさんとカインピューピューさんは2年前まで、ボガートのヤンゴン工場で働いていた。1日の労働時間は11時間半。休憩時間はわずか45分。残業代は出ない。工場の従業員はほぼ全員が女性だが、産休制度はない。また出産のための休暇をもらおうとすればすぐに解雇されてしまう。こうした待遇にかねて不満をもっていたキントゥトゥミェさんら15人の女性従業員は、劣悪な労働環境の改善を訴え、ストライキを起こし、解雇された。

カインピューピューさんによると、労使関係がうまくいかないのには2つの理由がある。

1つは、ミャンマーの工場で働く従業員と台湾にある本社の従業員の仲介役となるミャンマー人が保身のために事実と異なる情報を台湾本社に上げていること。もう1つは、ミャンマー人従業員と台湾本社の従業員が地理的に離れたところにいるため直接対話できる機会がなく、言語の壁があり、意見を正確に伝えられないということだ。

キントゥトゥミェさんとともに不法解雇されたカインピューピューさんは「台湾の本社の人にいまだにミャンマーの工場の本当の状況を伝えられていない。中国人はミャンマー語が分からないし、私たちミャンマー人は中国語がわからない。どうしようもない」と語る。

安価な労働力を求めてミャンマーに進出する外資系企業が近年増えている。縫製工場は労働集約型であるため人件費の安い国に集まるのは自然の成り行きだ。日本企業も今後、ミャンマーへの進出が予想されるが、キントゥトゥミェさんは「日本企業の工場ができたら雇用が増えて嬉しいし、一生懸命働きたい。だって日本人は優しいでしょ」と笑顔で語る。