エジプト、スエズ運河の新航路開削計画を発表

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エジプトのシシ大統領は8月4日、インド洋と地中海を結ぶスエズ運河に72キロメートルの航路を新たに加える計画を発表した。英ガーディアン紙らが伝えた。エジプト政府は、新航路の完成で通航できる船舶数が1日あたり49隻から97隻に倍増するとしており、「現在、年間50億ドル(現在のレートで約5100億円)の歳入が約3.5倍増える」(スエズ運河庁のモハブ・マミシュ長官)と期待する。

発表された計画によれば、既存の航路に平行して新しく航路を開削。72キロメートルの新規航路のうち、35キロメートルを新しく掘削し、37キロメートルを既存航路の拡張によって建設する。総工費は40億ドル(約4080億円)としているが、シシ大統領は、海外投資でなく国内投資でまかなうと述べている。

だが計画には不透明さがつきまとう。当初、政府は3年かけて新航路を設ける計画だったが、大統領やマミシュ長官らは1年以内の完成を望んでおり、実現が可能かどうかは疑問が残る。

こうした計画の前倒しを打ち出す背景には、「アラブの春」以降の政治不安により、観光収入や西欧諸国からの投資が激減しているエジプト経済を立て直したいというシシ大統領らの思惑があると見られる。

スエズ運河はヨーロッパとアジアを結ぶ国際的に重要な水路として140年以上機能してきた。南アフリカ・喜望峰を経由しないことから航行時間を大幅に短縮するなど輸送の大動脈となっている。日本船主協会の統計によれば、日本もここ数年、年間千隻以上が物資の輸送に利用している。ただ一方で、通航可能な航路が1レーンしかなかったため、一方の船舶が停留して、もう一方の船舶に航路を譲るなど、課題を多く抱えている。(河合正貴)