携帯アプリでメッカにお祈り、阪大イエメン人留学生ハニ・アルシャリフさんが母国紹介

家族の写真を紹介するハニさん。短刀をお腹の前に差す家族の写真を紹介するハニさん。短刀をお腹の前に差す

イエメンからの留学生ハニ・アルシャリフさんが母国を紹介する催しが8月3日、大阪市東淀川区のアジア図書館で開かれた。ハニさんは、イエメン南西部の港湾都市モカの出身。口腔学の研究のために2011年から大阪大学大学院に在学中だ。

イエメンは歴史的に、16世紀のオスマン帝国による支配、英国の南イエメン支配(1839年~1967年)、南北イエメン統一(1990年)を経て、最近では2011年から2012年にかけて発生した大規模な反政府デモ「イエメン騒乱」が起きている。

世界銀行によると、イエメンの合計特殊出生率は、2012年時点で1人あたり4.21人。参加者から「ハニさんは何人きょうだいか」と質問されると、ハニさんは「10人きょうだいで、30歳の自分が一番上。一番下は6歳。きょうだいの名前を忘れてしまう時がある」と笑いを誘った。

ハニさんをはじめイエメン国民の99%以上はイスラム教徒で、1日5回サウジアラビアの聖地メッカにあるカアバ神殿に向かってお祈りをするため、どこにいても方角を知る必要がある。ハニさんは、カアバ神殿の方角を示すスマートフォンアプリを紹介し、参加者の関心を引いた。

ハニさんがこの日、腰に差していたのは「ジャンビーア」というアラビア半島で誕生した短刀。イエメンでは成人男性にのみ帯刀が許されている。一見危険にも思えるが、実際に使うものではなく、成人の証であったり、所有者の部族を表したりと、シンボル的な意味を持っている。ケンカになり、柄に手を触れたり、刀を抜き取ったりすると、法律により罰金が科せられるという。

参加者からイエメンの若者と仕事について質問が出ると、ハニさんは「大学を出た人は、医師やエンジニアを目指すが、多くの人がイエメンを出て、北米や英国、サウジアラビアやカタールなどで仕事に就く」と答えた。ハニさん自身は、将来的にはイエメンに帰ることを考えているが、学業を終えた後はまず北米で働くことを考えているという。

若者が仕事を求めて国外に出ることに対して、政府は対策を立てているのかという質問に対しては、「政府は無策。国民の政府への不満が、“アラブの春”から派生したイエメン騒乱を起こした」と話した。

イエメンには、4つの世界遺産(首都サナアの旧市街地、砂漠の摩天楼と称される都市シバーム、古都ザビード、固有の動植物が生息するソコトラ島)がある。ハニさんは、いつかイエメンを訪れてくれるよう参加者に呼びかけた。(西森佳奈)