世界難民の日、安田菜津紀さんらが「家族」の大切さを訴える

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特定非営利活動法人国連UNHCR協会は6月20日、東京・渋谷の青山学院アスタジオで「世界難民の日:映像と写真で見る家族の物語」を開催した。スピーカーは、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんと国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)・スーダン事務所の首席保護官・佐藤滋之さん。難民問題を身近に感じることができるように、今回のテーマは「家族」だった。

■「家族のために何かしたい」、人身取引被害にあった子どもたち

「私は保護してもらったから、住む場所も食べるものもある。でも、家族は毎日食べているのだろうか」、「家族を助けるためにどんな仕事ができるだろうか」。これは人身取引被害にあった子どもたちの言葉だ。同時に、「理不尽に家族と引き離される子どもたちを1人でも減らしたい」と、安田さんがジャーナリストを目指すきっかけとなった言葉でもある。子どもたちは、人身売買業者に騙されて売られた後、強制労働を強いられ、虐待も受けてきた。それでも、子どもたちの思いはいつも家族に向いている。

■生きるために家族と離れる子どもたち

子どもたちは両親や兄弟と一緒に避難する。だが、生きるためにやむを得ず、家族と離れて物乞いをするようになった子どもたちがいる。貧しさゆえに、親も子どもをかまうことができない。だが、「子どもたちのために家族のつながりが必要だ」と佐藤さんは強調した。

2000年、国連総会は難民の保護と援助に対する世界的な関心を高めるために、6月20日を「世界難民の日」と定めた。UNHCRによると、現在支援を必要としている難民は5120万人(2013年末の時点)。そのうち3330万人は国内避難民だ。難民の総数が5000万人を超えたのは第二次世界大戦後初めてのこと。

「難民の地位に関する国際条約」に基づくと、難民の定義は、何らかの迫害を理由として国境を越えて避難した人々のこと。だが、迫害を受けているが国境を越えない「国内避難民」も存在する。国内避難民は、難民の認定が受けられず、保護を受けるのが難しかった。1990年台から国内避難民の厳しい生活が注目されるようになり、保護が始まった。難民が再び母国に帰る、もしくは第三国に定住するまでには、平均して17年かかる。

最後に安田さんは、「知ることがすべての原点、当事者が声を上げることは難しい。耳を澄ませてほしい」と強調した。(加地紗弥香)