報道自由度ランク、途上国トップはジャマイカの13位

国境なき記者団は1月30日、「2013年報道の自由度ランキング」を発表した。トップ3は前年と同じで、フィンランド、オランダ、ノルウェーの欧州勢が占めたが、経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)の「被援助国リスト」に入っている国・地域に限ってみると、首位は、13位のジャマイカだった。以下、コスタリカ18位、ナミビア19位、カーボベルデ25位、ウルグアイ27位、ガーナ30位と続く。アジアのトップは台湾の47位。主な先進国の順位は、ドイツ17位、英国29位、米国32位、フランス37位、韓国50位、日本53位だった。

■紛争下のマリは25位から99位に急落

順位を最も落としたのは、西アフリカのマリだ。前年の25位から99位へ急降下した。マリでは2012年から政情不安が深刻で、1月には、サハラ砂漠の遊牧民トゥアレグ族で構成する「トゥアレグ抵抗運動」が、独立を求めて蜂起し、同国の北部を制圧した。3月には軍事クーデターが勃発。その後、イスラム武装勢力が北部を占領し、紛争状態に陥った。2013年に入ってからは、フランスが軍事介入する事態となっている。こうしたなか、多くのジャーナリストが襲撃され、また軍が政府系メディアを掌握し、メディアに対する検閲を強めている。

対照的に、順位を最も上げたのは、アフリカ南東部のマラウイだ。146位から75位へ急上昇した。2012年4月に死去したムタリカ大統領は晩年、強権的な政権運営をしてきたため、マラウイの順位はこのところ低かった。だが女性大統領の誕生で、報道自由度はかつてのレベルに戻りつつある。

このほか、民主化への取り組みが評価されたミャンマーが169位から151位へ、刑務所にジャーナリストが収監されていないことからアフガニスタンも150位から128位へそれぞれランクアップ。コートジボワールも159位から96位へと大きく順位を上げた。

東南アジア諸国連合(ASEAN)のトップは、122位のブルネイ。マレーシアは122位から145位へと下げ、同国としては過去最低の順位となった。情報へのアクセスに対する制限が厳しくなっていることが理由。同様の理由で、カンボジアも117位から143位に低下した。世界で2番目に多くネット市民を刑務所に入れているベトナムは、前年と同じ172位(ワースト8位)。

ジャーナリストへの暴力行為や殺害が増えているインドと中国の順位はそれぞれ140位、173位(ワースト7位)だった。

■シリアは前回と同じワースト4

中東・北アフリカのトップは、101位のレバノンだった。この地域で最も順位を下げたのはオマーンで、117位から141位に後退した。ネット市民やブロガーなど50人が「サイバー犯罪」の容疑で起訴されたためで、12月だけで、裁判での抗弁権なくして、少なくとも28人が有罪判決を受けた。

イスラエルは、イスラエル軍がパレスチナ自治区のジャーナリストを標的にしているため、前年の92位から112位に低下。アラブの春で政権交代を実現させたチュニジアとエジプトはそれぞれ138位(前年は134位)、158位(同166位)と低いレベルにとどまった。

アサド政権と反政府勢力の戦いが続くシリアは、ジャーナリストとネット市民の死者を多く出し、前年と同じ176位(ワースト4位)。2012年はかつてないほど多くのジャーナリストやネット市民が殺されたが、シリア以外でこうした傾向が強かったのは、ソマリア(175位)やメキシコ(153位)、パキスタン(159位)などで、順位は軒並み低い。

東欧では、ロシアが前年の142位から148位へランクダウンした。プーチン氏が再び大統領に就いたが、反対運動への弾圧を強めているためだ。ロシアでは、ジャーナリストを殺害・襲撃しても罰されていないという。

アフリカでは、南アフリカが52位と、前年までのトップ50から外れた。国家の情報を保護する法案が国会に提出され、ジャーナリストらにとって脅威になるというのが理由。また、デモを取材中の記者が殺される事件が起きたタンザニアは34位から70位へ下がった。

報道自由度ランキングの最下位(179位)は、アフリカ北東部のエリトリア。エリトリアでは先ごろ、国軍の兵士らが首都アスマラにある情報省を包囲したり、拘留するジャーナリストの殺害などが起きている。178位北朝鮮、177位トルクメニスタン、シリアまでのワースト4は前年と同じ顔ぶれだった。