自転車で世界を周るスウェーデン人が西サハラの解放を訴え、「みんなで声をあげれば社会は動く」

サハラ・アラブ民主共和国のライダースーツに身を包むゴドビさん(右)とラドラさん(左)。自転車の後ろで国旗がはためくサハラ・アラブ民主共和国のライダースーツに身を包むゴドビさん(右)とラドラさん(左)。自転車の後ろで国旗がはためく

「(モロッコの植民地になっている)西サハラの現状を知れば、誰もがおかしいと思うはず。多くの人を巻き込んで、モロッコ政府や国連にプレッシャーをかけたい」。こう話すのは、自転車で世界を周り、西サハラの解放を訴えるスウェーデン人活動家のサナ・ゴドビさんだ。アフリカ大陸の北西部に位置する西サハラは1975年、隣国のモロッコに侵略され、モロッコ政府の実質支配が続いている。

みどり、赤、白、黒のライダースーツ

みどり、赤、白、黒。サハラ・アラブ民主共和国(西サハラに古くから住む人々「サハラーウィ」がアルジェリアの難民キャンプで立ち上げた亡命政府)の国旗と同じ色のライダーシャツを身につけたゴドビさんは、自転車で日本の道路を颯爽と駆け抜けていく。胸にはイスラム教のシンボルである三日月と星。自転車の後ろには、サハラ・アラブ民主共和国の国旗がはためく。

ゴドビさんは現在、同じく活動家で友人のベンジャミン・ラドラさんと一緒に日本を北上中だ。2022年5月にスウェーデンを出発した2人は、東ヨーロッパを回って1年後の5月に福岡に上陸。日本を縦断した後は、東南アジア、西ヨーロッパを周って、難民キャンプがあるアルジェリアのチンドゥーフを目指す。2年半で40カ国を周る計画だ。

この旅の目的は、多くの人に西サハラの現状を伝えることだ。西サハラでは1975年からモロッコの実効支配が続く。サハラーウィが西サハラの主権を主張すると、モロッコ警察にすぐに拘束され、暴行を受ける。自分たちの国であっても声を上げることができない。

一部のサハラーウィは、モロッコから侵攻を受けた際に隣国アルジェリアに逃れた。彼らは難民キャンプでサハラ・アラブ民主共和国を設立し、現在もモロッコと抗争を続けている。 

ゴドビさんはこう断言する。

「自分の国が50年近くも他国に支配されていたら誰だって我慢できない。西サハラの状況を知れば、みんな何かしらの行動を起こす」

だがウクライナやパレスチナの現状と違って、西サハラの問題を知る人は少ない。この理由についてゴドビさんは「モロッコ政府はメディアや国際NGOが西サハラに入るのを許さない。西サハラの中では警察がサハラーウィを監視する。情報は完全にコントロールされ、西サハラのニュースが流れないからだ」と語る。

どうすれば多くの人に西サハラのことを知ってもらえるのか。2人がたどり着いた答えは、自転車での旅だった。「自転車に乗っていたら、いろんな人に興味を持ってもらえるし、新しい人にリーチできる。これほど効果的なものはない」(ラドラさん)

2人は日本を縦断しながら、道中で人々と交流。西サハラの現状を伝えるイベントも各地で開催してきた。京都大学や早稲田大学など10校以上の大学で講演もした。

「私にはバイデン(米大統領)やマクロン(仏大統領)に直接電話して、『今すぐ西サハラで(独立の賛否を問う)国民投票をしろ』と言うことはできない。だが、いろんな人に会って西サハラのことを伝え、つながりを作ることはできる。ひとつひとつの出会いが社会的なムーブメントにつながる」とゴドビさんは笑いながら話す。

日本を縦断しながら各地で西サハラの現状を伝えるイベントを開催するゴドビさんとラドラさん

日本を縦断しながら各地で西サハラの現状を伝えるイベントを開催するゴドビさんとラドラさん

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