【ガーナNOW!女子大生は見た(4)】「オモテナシ」はガーナ料理の一番のスパイス!

ジェロフライスとチキン、コールスロージェロフライスとチキン、コールスロー

今回も、第3回連載に続いて、ガーナ料理を紹介する。コメ、ヤムイモ、プランテン(調理用バナナ)を使った料理にスポットを当てたい。ただ外国人の私から見て、ガーナ料理を語るうえで欠かせないのはガーナ流「おもてなしの精神」。なので、料理の食べ方なども含めた食文化についても触れる。

■若者が大好きなのは“ガーナ流パエリア”

ガーナの都市部ではこのところ、コメの需要が伸びている。その背景にあるのは「手ごろさ」だ。コメは、フフやケンケなどの伝統料理と比べて調理が簡単。冷蔵庫があれば、炊いたコメも日持ちする。都市部のライフスタイルに合っているのだ。

都市部で、とりわけ若者から絶大な支持を得ているコメ料理がある。「ジェロフライス」と呼ばれるトマト味の真っ赤な炊き込みご飯だ。スペインのパエリアやインドのビリヤニに少し似ている。ジェロフライスの上に、ソーセージや鳥肉をのせ、真っ赤なピリ辛ソース(トマトペーストやタマネギ、たくさんのスパイスを加えたもの)や、シトーという名の真っ黒な香辛料をかけて食べる。ガーナ大学の学食では有数の人気を誇るメニューのひとつだ。

ガーナではもともと、ボルタ川流域の北部でコメ栽培が盛んだ。伝統的なコメ料理に「ワチェ」という赤飯のような豆ご飯がある。赤の色付けには、ワチェ・リーフと呼ばれる葉っぱを使う。

食べ方は、ワチェの上に、キャッサバを乾燥させて粉状にした「ガリ」や、短く切ったスパゲティ、辛いトマトソースなど、好みのトッピングをのせ、ぐちゃぐちゃに混ぜて口に入れる。ワチェには独特な豆の風味があり、外国人の間では好き嫌いがはっきりと分かれる。実をいうと、私の唯一苦手なガーナ料理だ。

ワチェ。スパゲティとたまご、トマトソースをトッピング

ワチェ。スパゲティとたまご、トマトソースをトッピング

■「揚げたヤムイモ」は1つ10円から

簡単な調理で食べられるという理由で定番なのは、ヤムイモやプランテンをゆでた「アンぺシ」と呼ばれる料理だ。コントンムリ(ココヤムの葉っぱ)やナスのシチュー、ピーナツスープなどに浸して食べる。ヤムイモやプランテンの素朴な味がクセになるおいしさ。ウェレ(牛の背肉)と一緒に口に入れると、これがまた格別だ。

アンペシ。コントンムリのスープ、ガーデンエッグのシチュー、チキンの組み合わせ

アンペシ。コントンムリのスープ、ガーデンエッグのシチュー、チキンの組み合わせ

小腹が空いた時にちょうどいいのは揚げたヤムイモ。トウガラシ、タマネギ、トマトなどをすり潰したピリ辛ソースを添えて食べれば最高。路上では1つ20ペセワ(約10円)で売られていて、手軽に手に入る。シンプルだが、私の最も好きなガーナ料理だ。

揚げたヤムイモとピリ辛ペッパー。後ろに見えるの茶色い物体がヤムイモ

揚げたヤムイモとピリ辛ペッパー。後ろに見えるの茶色い物体がヤムイモ

ガーナ料理で忘れてはならないのが、揚げたプランテンを豆のシチューに添えて食べる「レッドレッド」。真っ赤なスパイスとパームオイルの色に染まった豆のシチューが名前の由来。これは外国人への受けも抜群にいい。

レッドレッド

レッドレッド

■口癖は「ウチに食べに来ない?」

ガーナの豊かな食文化は「おもてなし精神」なしには語れない。ガーナ大学の友だち(女性)はひんぱんに「うちの冷蔵庫にシチューとご飯があるから、よかったら食べに来ない?」と誘ってくれる。

友だちの部屋に行くと、まず出されるのは、ろ過してパック詰めにした水。これをガーナでは「ピュアウォーター」と呼ぶ。シチューとご飯の後には、ジュースやアイスなどのデザートが付くことも。食べ終わって食器洗いを手伝おうとすれば、「いいのよ。私が全部やるから」。最初から最後までゲストをもてなすのがガーナ流だ。

食事をしている人に居合わせると、「一緒に食べましょう」「あなたもどう?」などと、顔見知りでなくても声をかけてくれる。チョップバー(庶民のお食事どころ)で料理の写真を撮っていたら、撮影に協力してくれたうえに、昼食までご馳走してくれた親切な男性もいた。

中年男性から食事に招かれた筆者(左から2人目)

中年男性から食事に招かれた筆者(左から2人目)

■まな板は不要! 男も女も料理の達人

ガーナ人は男女問わずみんな料理がうまい。というか、達人の域に達している気がする。まな板は使わずに、見事な包丁さばきで野菜を上手に切る。「女は、刃物を恐れてはいけない。母からそう教わったの」と話すガーナ大のクラスメートは、私と同い年とは思えないほどたくましい。立派なアフリカン・マミーのようだ。

まな板を使わないのがガーナ流

まな板を使わないのがガーナ流

「小さいころから、母親が料理するのを見て、覚えたの。母親は商人で、ガーナ中をよく旅していたから、私が料理しないといけなかったのよ」と友人。ガーナの家庭では、子どもの教育費を稼ぐために、母親も働くことが多い。「大学生活でも、お金を節約しないといけないから、毎日ご飯を買うわけにはいかない。料理ができないと、生きていけないのよ」。ガーナでは料理は趣味ではなく、生きるための手段なのだ。

料理のうまさには「田舎の文化」も関係している。「田舎では毎日、みんなで集まって料理するんだ。母さんやおばあちゃんが料理しているところに、子どもも呼ばれて手伝う。フフをついたり、スープを作ったり。僕はそうやって料理を覚えたよ」と男性の別のクラスメートは胸を張る。

首都アクラなどの都会では、週末に大量に料理をして、冷蔵庫で保存しておく人が多い。フフやケンケなど、調理の工程が面倒なものを除き、バンクーやシチュー類、ご飯ものなど何でも作る。友だちの部屋の冷蔵庫に、いつで料理がストックされているのはこのためだ。

ガーナの都市部では、ライフスタイルの近代化で食文化が変わってきている。でも私は、食べるものや食べ方、味の嗜好は変化しても、ガーナ人のおもてなし精神はいつまでも同じであってほしいと願う。

アシャンティ州の村でフフを作る家族。ふかしたキャッサバとプランテンを臼に入れ、餅状になるまでついていく

アシャンティ州の村でフフを作る家族。ふかしたキャッサバとプランテンを臼に入れ、餅状になるまでついていく