「愛と慈悲の心を育む努力を」、ダライ・ラマ14世が静岡で世界平和を訴え

来場者との握手に応じるダライ・ラマ14世(日本平ホテルで)

チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は11月22日、静岡市の日本平ホテルで開かれた「世界の平和を祈る祭典in日本平」に特別ゲストとして登壇した。1000人を超える来場者を前に、異なる宗教が調和を図ることの大切さと、ひとりひとりが愛と慈悲の心を育む努力をしてほしい、と訴えかけた。

この祭典には神道、キリスト教、イスラム教、修験道、日本仏教、チベット仏教の指導者・信徒らが集まった。それぞれの宗教がそれぞれのやり方で平和への祈りを捧げた。このイベントを主催したのは、チベット問題の解決を目指す「セーブ・チベット・ネットワーク」。

ダライ・ラマ14世はスピーチの冒頭、「異なる宗教が集まり、ここにいるすべての人たちが心をひとつにして清らかな心で世界平和を祈ることができたのは大変素晴らしい」とあいさつした。

また、世界にはさまざまな宗教が存在するが、ダライ・ラマ14世は、すべての宗教の究極の目標についても言及。「ひとつひとつの宗教には異なる哲学的な見解がある。教えや実践も違う。だがどの宗教も、世界平和のために愛と慈悲の心を高める、と説いているのは共通だ」と述べ、それぞれの宗教が目指すところは同じということを強調した。

宗教の目標は同じなのに、世界にはなぜ、多種多様な宗教が存在するのか。ダライ・ラマ14世は「世界にはさまざまな民族が暮らしていて、資質や関心も異なる。その違った人たちに一番適切な方法論を提供するために宗教の違いがある」と説明した。

とはいえ、世界を見渡すと、宗教の違いによる争いは少なくない。世界平和を実現するためにすべきこととしてダライ・ラマ14世は「異なる宗教同士でも、愛と慈悲の心をもって、相手を理解しあうことが大切。また、その心を(出席者にも)高めてほしい。そうなれば、家庭の平和、社会の平和、そして世界の平和へとつながる」と説いた。(田中美有紀)