中期的に最も有望なのはインドネシア、日本メーカーの海外動向調査

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国際協力銀行(JBIC)は11月29日、「わが国製造業企業の海外事業展開の動向」と題したアンケートを実施し、その結果を発表した。日本の製造会社は、ビジネスの観点から中期的な有望国としてインドネシアを考えていることがわかった。この調査で中国が1位から陥落したのは初めて。ポイントを下にまとめた。

1)インドネシアの市場に期待

中期的な有望国と最も高く評価されたのはインドネシア。市場拡大への期待が背景にある。

この調査を1989年に始めて以来、中国が初めて1位の座から陥落し、4位に後退した。2位はインド、3位はタイ。上位4カ国の得票率は40%前後で拮抗している。

ただ長期的(向こう10年程度)な有望国では引き続き、インドと中国が1位、2位を占めた。両国は今後も主要な事業展開先として認識されていることがわかった。

2)中国を有望国から外した理由は「労賃の上昇」

今回の調査で中国を有望国から外した企業の4割強が「労働コストの上昇・労働力確保の困難」を最大の懸念材料として挙げていた。その一方で、中国を有望国ととらえる企業の多くは「市場の規模・成長性」を評価するなど、中国に対する視点の違いが浮き彫りとなった。

前回の調査で中国を有望国に挙げ、今回も同様に答えた企業の数はほぼ半減した。だがこのうち中国事業を縮小・撤退すると回答した企業はごく少数。

3)「海外事業を拡大する」は8

日本の製造会社の海外生産比率は拡大基調に戻ったことが明らかになった。回答した企業の8割以上は、海外での事業を引き続き強化・拡大する姿勢をみせた。海外で事業を進めることは、有益な情報を収集できるのはもちろん、海外勤務の経験者が増えることによる組織力向上など、国内の事業にも好影響を与える。

4)競争力は中韓印より「自社が上」

日本の製造会社にとって、新興国市場での主な販売先は今後も日系メーカーが中心となる。ただ非日系メーカーへの販売も拡大方向にある。

消費者向けの事業を手がける企業は約15%。中間層もターゲットに含めている企業が多くあった。アジアの新興国市場での製品競争力は中国系、韓国系、インド系企業と比べて「自社がやや上」と評価していることもわかった。

5)インドの電力インフラに問題あり

新興国の電力インフラについては、現地で事業展開する企業の約3割が「問題あり」と回答した。とりわけインドでその割合が約6割と最も高かった。

工業用水について「問題あり」と答えた企業はおよそ1割。また、運輸・通信インフラ(道路、鉄道、港湾、空港、通信)の中では、全地域に共通して道路の改善ニーズが最も高かった。

今回の調査は7月に調査票を発送し、7~9月に回収したもの。対象企業数は992社で、有効回答は625社(有効回答率63%)だった。この調査は、海外事業に実績のある日本の製造業の海外事業展開の現況や課題、今後の展望を把握する目的で実施している。今回は25回目。