“罰”として夫が妻の鼻を切り取る、アフガンで増えるDV

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アフガニスタンの男性が妻の鼻と口をナイフで切り取るという事件が起きた。ラジオ・フリー・ヨーロッパ(RFE)が12月17日に報じたもので、男性はヘロインを買おうと妻に宝石を売るよう命じた。ところが妻はそれを拒否。すると男性は、“罰”として妻の鼻と口を切り取ったのだ。男性はヘロイン中毒だった。

鼻と口を切り取られたシターラさんは、アフガニスタン西部のヘラート州に住む30歳の女性。意識不明の状態で血まみれになって倒れていたところを近所の人が発見した。シターラさんはトルコの病院に搬送され、どうにか一命をとりとめた。

アフガニスタンのメディアが全国規模で事件を報道したことを受け、同国の内務省は犯人捜査に乗り出した。だが、夫である男性はまだ見つかっていない。

■目撃した子どもたちが泣き叫ぶ

報道によると、シターラさんに対する残虐な行為を、4人の子どもは目撃。泣き叫んだことから、事件が発覚したという。

14歳の娘は「お父さんにお金を渡すことをお母さんが拒むたびに、お父さんはお母さんを殴る。私たち(子ども)のことも殴る」と話す。

シターラさんの4人の子どもは、シターラさんが治療を受ける間は親せきのもとで暮らす。ヘラート州の知事は、シターラさんが帰るまで4人の子どもを支援すると表明している。治療費は、同国の麻薬取締省とアフガニスタン国内の複数のNGOから集まった資金を充てる。

アフガニスタン独立人権委員会のシーマ・サマール委員長は「犯人は刑罰を受けるべきだ。警察は『犯人が逃げたこと』を言い訳にはできない」と主張する。警察は事件に関与した2人を逮捕したが、身元は明らかでない。

アフガニスタンでは、女性に対する暴力は日常茶飯事だ。家庭内暴力(DV)でも被害者は女性。強制結婚されるのもごく普通で、女性が学校や働きに行くことすら簡単ではない。アフガニスタン女性の自殺率は世界でもトップクラスといわれる。

■女性への暴力は前年から30%増

ヘラート州の人たちは、この事件の加害者である夫に対する公正な処罰を求めるデモを起こし始めた。参加者らは、犯人を訴追できない政府を責めると同時に、沈黙を守る姿勢を批判した。

2013年になってこれまでに180件の女性への暴力事件があったことを、ヘラート州の女性問題担当部署は明かしている。前年と比べると30%以上の増加だ。国連が12月に公表した報告によると、アフガニスタン全土でも女性に対する暴力は前年比30%増えている。

アフガニスタンは2009年、女性に対する暴力撤廃法を制定した。同法は、児童婚、女性の売買、女性に対する暴力を処罰の対象としている。だが適切に施行されていないのが実態だ。(有松沙綾香)