テロを増やさない! アフガンで活動するシャンティ国際ボランティア会が教育にこだわるワケ

子ども図書館に集まる子どもたち(2021年1月撮影)子ども図書館に集まる子どもたち(2021年1月撮影)

「教育も緊急人道支援のひとつ。アフガニスタンがタリバン政権になっても活動を続けたい」。こう訴えるのは、シャンティ国際ボランティア会(本部:東京・新宿)の山本英里事務局長兼アフガニスタン事務所長だ。同団体は、アフガニスタンで教育支援を手がける日本の唯一のNGO。タリバンがアフガニスタン全土を制圧した後も撤退する意思はないという。

教育支援を止めない

シャンティがアフガニスタンで活動し出したのは、2001年の米国同時多発テロ事件をきっかけに、米軍がアフガニスタンを空爆した後から。最初は緊急人道支援で食料や医薬品を配っていた。その後、アフガニスタン事務所を設立。2003年から、図書室の設置や絵本の配布を始めた。

タリバンが8月に制圧した後も教育支援を続ける必要性について山本氏は「子どもの成長は早い。教育が止まれば、教育を受けずに大人になる人が出てきてしまう」と話す。教育を受けていない世代がいると、次の世代に教える人材が不足する。復興には100年かかるともいわれる。

同団体のアフガニスタンでの活動は3つだ。1つ目は、青空教室状態の小学校に校舎を建てること。2つ目は学校にある図書室の設置を支援すること。3つ目は、アフガニスタン東部のナンガハル州ジャララバードに建てた「子ども図書館」の運営をはじめ、児童の読書を推進すること。このうち校舎の建設はタリバン制圧後も継続し、残り2つの活動も11月から一部が再開した。

だが活動を続けるにあたり困難も多い。

まず、タリバンとの交渉だ。山本氏によると、タリバンからはすでに、シャンティが活動し続けることを口頭で認めてもらった。「だが了承をもらっていても、それがタリバンの末端の人間まで伝わっているかは不明だ。タリバンの様子を伺いながら少しずつ活動を再開していくしかない」(山本氏)

また、シャンティが2020年末までに子ども図書館に置いている本や今後配布する予定の本の見直しも必要だという。山本氏は「女性が主人公の本は図書室に置くのをやめるといった対応が必要になるかもしれない」と説明する。

2001年に崩壊した旧政権で女性を抑圧したタリバンが政権を握ったことで、女性の教員の安全も懸案事項だ。アフガニスタンでは、都市部には女性の教師や校長は少なくない。教育現場は女性の社会進出の象徴だ。「タリバン政権になり、女性の教員はこのまま仕事を続けて大丈夫なのかと不安視している」と山本氏は言う。

治安の悪さも活動を展開するうえでの懸念点だ。山本氏は「10年ほど前から国土の半数が紛争状態にあるアフガニスタンでは、同じ県でも地域ごとに治安の状況は異なる。一部の治安が良い場所では、今でも女子は学校に通っている。治安の悪いところでは学校が再開しても、子ども(男女ともに)を学校に行かせない親は多い」と状況を述べる。

シャンティが2019年に建てた学校で学ぶ子どもたち。黒板も机もきれいだ(2020年撮影)

シャンティが2019年に建てた学校で学ぶ子どもたち。黒板も机もきれいだ(2020年撮影)

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