「寝る前は民主政治だったが、目を覚ましたらイスラム政府(タリバン)に支配されていた」。これは、アフガニスタン東部で住民への平和教育を進めるNGO平和村ユナイテッドの小野山亮代表理事がアフガニスタン人から聞いた言葉だ。タリバンがどう統治するのか社会不安が高まる中、小野山氏は「身近な争い事を解決する住民たちの学び合いが今こそ必要だ。争いの火種を抱えた村で衝突を未然に防ぎたい」と訴える。
タリバン兵も知らなかった
首都カブールが陥落したのは8月15日。現地からの知らせを聞いた小野山氏は「アフガニスタン政府が無血開城するとは驚いた。(同団体が活動する)東部では首都をめぐる戦闘になると予測していた。タリバン兵もここまでは想像していなかったのでは、という人もいる」と語る。
タリバンがアフガニスタンの9割以上(東部パンシール渓谷を残す)を支配し、懸念されるのが治安の悪さだ。タリバンが刑務所から囚人を解放したことが響いているという。東部のナンガルハル州の州都ジャララバードでは、かつては見られた女性の歩く姿が今はないという。
ジャララバード近郊でも事件が起きた。民家を襲う強盗にタリバンの兵士が発砲。その巻き添えで少女が犠牲となった。また、アフガニスタンの独立記念日(8月19日)の前日は、タリバンの旗を降ろしてアフガニスタンの国旗を掲げようとしていたデモ隊に対してもタリバンは発砲。少なくとも3人が死亡した。
小野山氏は「現地の人たちは強い不安を覚えている人が多い。そうした状況に精神的にも寄り添うことが必要だ」と話す。
女性は学校に行けている?
タリバンの報道官は8月17日、アフガニスタンを掌握して初めての記者会見を開き、女性は働けるし、また学校にも行けると女性の権利尊重を明言した。ただしシャリーア(イスラム法)の範囲内という条件付きだ。
だが現地からの情報によると、ジャララバード市内で女性が外出するときは家族の男性が付き添い、ブルカを身に付けているという。学校への通学は現時点では少女はできているが、成人女性は通学をやめた。
小野山氏によれば、タリバンとNGOの間ですでにNGOの活動をどうするかといった協議が始まった。活動を停止していたNGOは再開できるとし、女性スタッフの活動は保健、教育の分野に限って認められる模様だ。「だがどうなるかは分からない」と小野山氏は危惧する。
女性を対象とする活動にはNGOの女性スタッフが欠かせない。男性スタッフはアフガニスタンの慣習で、家族以外の女性と同席するのが難しいためだ。