途上国にもワクチンを! アフリカの新型コロナ死者数6割を占める南アから訴え

南アに到着したCOVAX(途上国向けのワクチンを各国が共同で調達する国際的な枠組み)の支援による新型コロナワクチン。南アのワクチン接種率は8月15日時点で1回目のみが12.5%、2回目完了が6.9%(写真は、南ア政府のフェイスブックページより引用)南アに到着したCOVAX(途上国向けのワクチンを各国が共同で調達する国際的な枠組み)の支援による新型コロナワクチン。南アのワクチン接種率は8月15日時点で1回目のみが12.5%、2回目完了が6.9%(写真は、南ア政府のフェイスブックページより引用)

「南アフリカの新型コロナの死者数はアフリカ全体の6割」。こう指摘するのは、ワクチン供給の平等性を訴える市民団体「アフリカン・アライアンス」のパートナーシップ担当責任者で、南アフリカ在住のマーザ・セユームさんだ。セユームさんは8月6日、ウェビナー「~オリンピック・ゲームの裏で~新型コロナのワクチン・医療格差が広がる世界」(主催:新型コロナに対する公正な医療アクセスをすべての人に!連絡会)に登壇した。

まるで「アパルトヘイト」

感染力の強い変異株(デルタ株)による第3波がアフリカを襲うなか、セユームさんが警鐘を鳴らすのは、ワクチン接種率の低さだ。アフリカ疾病対策センター(CDC)によれば、アフリカ全体でワクチンを2回打った人の割合(接種完了率)は1.75%。10%を超えるのは、モロッコ、セーシェル、モーリシャスのみ。1%を切る国・地域も少なくない。

アフリカで接種が進まないのは、ワクチンの供給量が足りないからだ。先進国が多くのワクチンを確保することは、途上国への「アパルトヘイト(人種隔離)」と例えられる。

ワクチン供給の状況をアパルトヘイトと表現したひとりが、南アのラマポーザ大統領。ロイター通信によると、ラマポーザ大統領は5月10日、「富裕国がワクチンを独占する一方で、貧困国の何百万人もの人々がワクチンを待ちながら死ぬとしたら、それはワクチン・アパルトヘイトだ」と述べたという。

セユームさんは、アフリカを含む途上国へのワクチンの必要性をこう訴える。

「(先進国が)ワクチン・アパルトヘイトを続けるのは本当に愚か 。長く続ければ続けるほど、さらなる変異株が出てくる。ますますパンデミック(世界的大流行)が長引き、世界全体が新型コロナに冒される。ワクチン国家主義はあってはならない」

ワクチン国家主義を進める先進国の狙いのひとつは、ワクチンや医薬品にかかる知的財産権(知財権)をコロナ禍でも守ること。知財権をもつ製薬会社は、想定外の損失を出さないよう、大量のワクチンや医薬品を、定期的に買えない途上国に対して高い価格を設定した。このため支払い能力が低い途上国は入手しにくい。

セユームさんは「(製薬会社が)知財権をもちつづけるのは、恥ずべきこと」と話す。米国のバイデン大統領は5月、ワクチンにかかる知財権の一時的な免除を支持する方針を示した。日本も米国に同調する動きを見せるものの、異なった趣旨の発言もあるという。

途上国向けのワクチンを各国が共同で調達する国際的な枠組み「COVAX」への支援も難航している。7月末までに集めるワクチンの目標数は12億本のはずが、実際は1億8000万本にとどまった。COVAXを含む「ACTアクセラレーター」の2021年の資金は、7月23日の段階で166億ドル(約1兆8000億円)も不足している。

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