元協力隊員が立ち上げたエチオピア発高級レザーバッグブランド「andu amet」、目指すは「完璧なエシカル」

andu amet代表・チーフデザイナーの鮫島弘子氏andu amet代表・チーフデザイナーの鮫島弘子氏

「生産ラインを止めてでも、完璧にエシカル(倫理的)でありたい」。世界最高級のエチオピアシープスキンを使ってバッグを製造・販売するレザーブランド「andu amet」(社名も同じ)の代表・チーフデザイナーの鮫島弘子氏は、つくば国際会議場で12月13日に開かれた市民講座「ビジネスで世界を変えたい――アジア・アフリカで私たちにできること――」(主催:筑波大学人文社会系グローバル人材育成教育プログラム)でこう語った。

andu ametのレザーバッグは、エチオピアの首都アディスアベバにある直営工房で、エチオピア人が手作りする。バッグ1個の完成に3日かかるため、1年に作れるのは120個。オンラインショップでしか販売していないが、売れ筋のトートバッグ「Big Hug」の予約は1年半待ちだ。価格は10万5840円(税込み)。

バッグはしっとりとした感触で、軽くて丈夫。カラフルなデザインは、「チマキ」と呼ばれるエチオピアのフルーツジュースの色の重なりに由来する。商品のラインナップは30種類に上る。

ブランド名のandu ametとは、エチオピアのアムハラ語で「一年(ひととせ)」という意味。革製品は使うほどに味わいを増すが、長く愛用してもらえるものを現地の職人とずっと一緒に作っていきたいとの願いをブランド名に込めた。

サステナブルな事業にするために鮫島氏が強く意識するのはエシカルだ。「商品の企画から素材調達、製造、販売まで、すべてのプロセスをエシカルにしたい。自 分で工場に行き、六価クロム(羊皮をなめすときに使うクロムが化学反応で有害物質の六価クロムに変わる)を浄化するシステムが稼働しているかどうか、確認 できるまで取引しない」。また原料の羊皮は、食肉の副産物のみを使用する。

4年前に1人で立ち上げた直営工房では10人のエチオピア人職人が働く。「エチオピアの平均年収の10倍の給料をもらう人もいる。職人を1人前に育てるには3年かかる。これまでに何十人もがドロップアウトしていった」。職人までの道のりは容易ではないが、職人レベルに達すれば“エシカルな賃金”を手にすることができる。世界銀行によると、エチオピアの1人当たりの国民総所得(GNI)は2013年のデータで470ドル(現在のレートで約5万4000円)だ。

鮫島氏は2002年 に青年海外協力隊員としてエチオピアへ赴任。デザインの活動をした。その際に、エチオピアシープスキンが付加価値の低い原皮のまま輸出されている現実に疑 問を感じた。「お情けでなく、誰もが憧れるファッションブランドを(エチオピアシープスキンを使って)作りたい。夢は、カルティエとシャネルの間に店舗を 構えること」と熱く語る。

andu ametは20日、「エシカルファッション・クロストーク~日本を身に纏う~」を東京都港区のショールーム「Gallery andu amet」で開催する。