子どもの9人に1人が紛争地で暮らす現実、世界の人道支援に「3300億円が必要」とUNICEF

国連児童基金(UNICEF)は1月26日、人道危機に追いやられている7600万人(うち子どもは4300万人)を支援するために2016年は28億ドル(3302億円)が必要だとする「子どもたちのための人道支援報告書2016年」を発表した。

人道支援が必要なのは、世界の国の約3分の1に当たる63カ国にものぼる。必要な金額を地域別にみると、中東・北アフリカが16億3000万ドル(約1922億円)で総額の6割近くを占め断トツだ。

うち約11億6000万ドル(約1368億円)がシリア危機への対応。シリア国内には約1350万人が命にかかわる緊急な支援を必要としている。国外に逃れたシリア難民もすでに400万人を突破した。安全な水、予防接種、教育、子どもの保護などのニーズが大きいという。

イエメンの事態も深刻だ。必要な金額は1億8000万ドル(約212億円)と膨らむ。2015年3月から激化する紛争で、人口の82%が人道支援を必要とするようになった。

イラクの必要額は1億119万ドル(約119億円)。イラクは320万人の避難民を出す一方で、シリア難民も受け入れるという二重の苦境に陥っている。

西部・中部アフリカでは4億7000万ドル(約554億円)が必要。なかでも、紛争と食料危機(120万人以上)に直面する中央アフリカ共和国は5569万ドル(約66億円)、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」による暴力行為が14年から拡大し、避難民が増え続けているナイジェリアは5555万ドル(約66億円)の資金がそれぞれ不可欠。

このほか、16年は2350万人が食料危機に直面すると推定されるサヘル地域(ブルキナファソ、ガンビア、モーリタリア、セネガル)でも4222万ドル(約50億円)が求められる。

東部・南部アフリカ地域の必要額は4億4590万ドル(約526億円)。紛争が13年から続く南スーダンの1億5446万ドル(約182億円)や、深刻な干ばつに襲われ、エルニーニョ現象の影響をもろに受けるエチオピアは1億600万ドル(約125円)など。ブルンジは、その周辺国(ルワンダ、タンザニア)に逃れた難民への支援も含めて2550万ドル(約27億円)が必要だ。

UNICEFの16年の人道支援計画で、最大の支出項目は「教育」の25%だ。人道危機にあっても教育を受けられる子どもの数をUNICEFは、15年初めの490万人から、16年は820万人(うち500万人がシリアの子ども)へ増やしたい計画。これに「水と衛生」(21%)、「栄養」(15%)、「保健」(12%)、「子どもの保護」(12%)などが続く。

UNICEFによれば、世界の子どもの約9人に1人が紛争地で暮らしている。紛争の影響を受ける場所に住む子どもが「5歳になるまでに、予防可能な要因で命を落とすリスク」は、それ以外の地域の子どもの2倍にも達するという。

気候変動の脅威も高まるばかり。5億人以上の子どもが「高い頻度で洪水が発生する場所」に、また1億6000万人近くの子どもが「干ばつが深刻な場所」に住んでいる。こうした影響もあって、UNICEFの16年の資金要請額は3年前から倍増した。

UNICEFはあわせて、15年の主要ドナー(援助国・機関)を発表した。各国政府・機関のなかで日本政府は5位(1億1370万ドル=約134億円)、民間では日本ユニセフ協会は1位(2640万ドル=約31億円)だった。15のUNICEFの要請額33億ドル(約3891億円)だったが、集まったのはその68%の22億ドル(約2594億円)。

日本ユニセフ協会のウェブサイトから引用

日本ユニセフ協会のウェブサイトから引用