カンボジアでかごブランド「moily」を日本人女性が立ち上げ、支援に依存しない生活を!

moilyの商品。日本のパン屋や喫茶店で使われる

カンボジアのシェムリアップでかごを作る日本人女性がいる。池宮聖実さん(28)だ。池宮さんは大学卒業後、孤児院教員や英語教師といったボランティアを16カ国で経験。途上国の人が支援に依存していると感じ、「モノづくりを通じて、生活の向上に主体的に取り組む人を増やしたい」と、2015年3月にかごブランド「moily」を立ち上げた。

moilyのかごを実際に作るのは、シェムリアップ市内からバイクで約1時間半のところにあるコックトラーチ村に住む9人のかご職人たち。コックトラーチ村の住民は農家が大半で、貧しい家庭が多い。「まずは村人たちが自立することが必要」と池宮さん。作物が育ちにくい乾季(11~4月)でも収入を得られるように、かご作りで雇用を生みたいと考えている。

池宮さんは「貧しさへの同情や支援をPRして商品を売るのではなく、質やデザインで勝負する」と、商品の質を高めるためにさまざまな工夫を凝らしている。そのひとつが、職人たちに一定の給料を与えず、買い取り形式をとっていることだ。「ノルマを設定し、義務感を与えるといい商品にならない。好きなときに、好きな分だけ作ることで心のこもった商品になる。それを購入してもらえることで自信にもつながる」と池宮さんは説明する。

池宮さんはかごの素材にもこだわりを持つ。用いるのは「ラペア」と呼ばれるトウの一種。カンボジアやベトナムの一部に生息する植物だ。ツタのように細長く、長いもので4~5メートルにもなる。日本で用いられているトウと比べて、かびにくく、強度も強い。

ニスで塗料せず、自然のものをそのまま使用しているのも特徴だ。池宮さんは「使えば使うほど、美しく色味が変化していく。お客さまも質の高さを喜んでくれている」と嬉しそうに話す。

また「ただ雇用を生むだけではなく、家族と過ごす時間や仕事への誇りなど、お金以外の価値を伝えていきたい」と池宮さん。かごが使われている写真を見せたり、購入者からの手紙を届けたりすることで、職人に仕事の価値を伝えている。

moilyの製品は現在、東京都、新潟県、岐阜県、愛知県のかご屋や雑貨店で売られている。ウェブサイトでも購入が可能だ。池宮さんは今後について「自分たち(職人)の生活が向上することで、村の問題の自発的な解決につながってほしい」と話した。

かごは手編みだ

かごは手編みだ