テーブルフォーツーの途上国支援は給食費を渡すだけではなかった! 目指すは「給食の自立運営」

学校菜園を楽しむ子どもたち。牛ふんから作った有機肥料を使ったり、化学合成農薬を減らしたりして野菜を栽培する(写真提供:NPO法人テーブルフォーツー)学校菜園を楽しむ子どもたち。牛ふんから作った有機肥料を使ったり、化学合成農薬を減らしたりして野菜を栽培する(写真提供:NPO法人テーブルフォーツー)

NPO法人テーブルフォーツー (TFT)が、アフリカ・アジアへ給食費を送る活動をアップグレードさせている。支援金を募るキャンペーン「おにぎりアクション」が大好評のTFTだが、「おにぎりアクション」ほかのプログラムで集められたお金を使って、学校に給食を届けるだけではなく、食材を自給するための学校菜園づくりや、地元政府からの積極的な関与を促す活動にも注力。たとえ将来支援が途絶えても、現地が自立して持続的に給食制度を維持できる体制づくりを模索する。

学校菜園でまかなう!

「おにぎりアクション」とは、インスタグラムやフェイスブックなどのSNSにおにぎり写真を1枚投稿すると、協賛企業約40社から5食分の給食がアフリカ・アジアの学校に送られるキャンペーンだ。TFTは2015年からこれまでに4回実施し、2018年10~11月の給食支援が目標の100万食分を上回る105万食分に達する盛り上がりを見せている。

こういったキャンペーと同時にTFTが力を入れるのが、将来的には支援を必要としない給食運営ができるようにする取り組みだ。安東迪子代表理事は、自立支援を重要視する理由を「たとえ支援元がなくなっても一緒に潰れてしまわないよう、支援なしでも自立できるようになってほしいから」と説明する。

自立支援の方法のひとつは学校菜園づくりだ。TFTが種や農具など必要な資材を取りそろえ、農業指導の専門家を手配する。タンザニアのダルエスサラーム郊外の小学校では、2008年から野菜づくりを始め、1週間に3回の給食を学校菜園だけでまかなえるようになった。

一歩進んで、商品作物の栽培に挑戦する学校もある。マラウイのリロングウェ郊外の小学校だ。2年前までは学校菜園で給食用のトウモロコシを育てていたが、児童の増加で全員分をまかなえなくなった。そこで、高値で売れるニンニクを栽培し、食材費を確保しようともくろむ。問題は、学校の職員だけでマーケットの状況を察知し、高値で売れるものをつくり続けるのが難しいこと。「学校職員が商品作物を作って売るのはサステナブル(持続可能)とは言えない」と安東さんは懸念する。

■“給食農家が小金持ちに

持続的な給食体制を確立するのに有効なのが、地元政府が給食予算を増やし、給食に積極的に関与するよう働きかけることだ。タンザニアのザンジバル諸島にある10の小学校では農業省が農家と契約を交わす。農家は教育省が指定する小学校向けに野菜を栽培し、国が買い上げ、分配する。政府が学校給食の運営にかかわることで、農家にとっては安定した収入を得られるようにもなる。

安東さんは「給食の食材をつくる農家の中には、安定した収入を得る人もいる。雨漏りする藁葺屋根をトタン屋根に替え、土壁をレンガづくりにするなど、少しずつ生活が向上してきた」と嬉しそうに話す。今は、政府が野菜を買い取る資金をTFTが援助するが、将来的には政府が全予算を確保し、給食用野菜の栽培と地元農家の生活安定の2つを実現してほしい、と安東さんは期待する。

TFTはまた、食料廃棄の削減にも取り組む。給食用に買った食材が保管庫の中で虫食い状態になっていることを支援先でたびたび目にしてきたからだ。「食材はある。だけど、虫食いだらけのトウモロコシの袋がいっぱい置いてあっても、誰も気にとめない」。TFTでは、WFP(国連世界食糧計画)と連携し、密閉容器を配布し地元NPOを通して食材の管理方法を指導しているという。

生き残ったのは2人だけ

自立した給食運営への道のりは長い。ある英国NGOは、給食支援を自立した運営体制へ移行させるまでに30年以上かかったと安東さんは言う。

「支援が勝手に始まり、勝手に終わる(日本などの支援元が支援不能になる)ことで、与えられていたものがなくなって辛いという精神的な苦痛まで味あわせたくない。もう支援は必要ないと言われるまで続けたい」。これは安東さんのこだわりだ。

安東さんは支援先を初めて視察したときに受けた衝撃を忘れられない。ルワンダの給食施設の男性職員エリさんからこんな話を聞いた。「給食がないこと自体は大変ではない。もともと何もないから辛いと感じたこともない。ただ何かの病気が流行ると(栄養状態が悪いため)バタバタと死んでいくだけだ」。エリさんの小学校の同級生およそ100人のうち、生き残っているのは2人だけという。安東さんはだからこそ給食を定着させ、子どもの栄養状態を恒久的に改善させたいと行動する。

安東さんが10月半ば、新規支援先のケニアのムファンガノ島を視察したときのことだ。子どもたちからとびきりの笑顔で出迎えられた。おにぎりアクションの話をすると「おにぎりアクション! おにぎりアクション!」と熱唱し、踊って喜ぶ姿は、貧困状態の子どもたちという暗さからほど遠く、希望に満ち溢れていた。「1人でも多くの子どもたちの笑顔を守り続けるために、30年先の自立した給食支援を見据え、支援を続けたい」、安東さんはそう決意を語った。

給食に出るのは、学校菜園で収穫した食材などを使った、茹でたとうもろこしや大豆、甘いおかゆのようなものなど。家庭では用意しづらい温かいものが多い(写真提供:NPO法人テーブルフォーツー)

給食をおいしそうに食べる、ケニア・ムファンガノ島の子ども。給食は、学校菜園で収穫した食材などを使った、茹でたとうもろこしや大豆、甘いおかゆのようなものなどが出る。家庭では用意しづらい温かいものが多い(写真提供:NPO法人テーブルフォーツー)