糖尿病患者を救う? 健康意識の波に乗るセブのスムージー店mooshi

0319若林さん、mooshi_入り口mooshiセブITパーク店

フィリピン・セブのサン・ホセ・レコルトス大学の3年生、クラリス・イ・ティゲさんには毎日夕食をとるための行きつけの店がある。その名もmooshi。スタンプカードでポイントを貯めると無料で一品食べられる。それを求めて、学校の昼休みに抜け出してやって来ることもあるという。完全なmooshiラバーだ。

そんなに毎日来店する理由は何かと尋ねると「私は糖尿病。だからヴィーガン(完全な菜食主義者)なの。ここはベジタリアンなメニューが揃っていてお気に入り」と答える。

世界保健機関(WHO)によると、フィリピンの糖尿病患者は、2000年の277万人から2015年には350万人まで伸びた。2030年には700万人を超える見通しだ。また、糖尿病の発症年齢が若くなってきている。甘い物を好むフィリピン人の食生活が原因といわれる。

mooshiは2013年11月、セブ在住のトライアスロン選手ジュン・アンへレスさんが夫婦で「フィリピン人の健康意識を高めるために」(妻のキャシーさん)立ち上げた。当初はヘルシー志向なビジネスがウケるか不安だった、とキャシーさんはいう。

そこでまずは半年間お試しに、セブ市内のバニラッド・タウン・センター(BTC)で毎週日曜日に開かれるフードマーケットで、スムージーやジュースを売るところから始めた。すると思いのほかよく売れた。しかも予想より若者にウケたという。顧客の要望が増えたことでmooshi開店へと踏み切った。現在セブでSM シティ・セブ、アヤラモール、BTC、セブITパーク、,の4店舗を展開する。

mooshiの特徴は、チアシード、モリンガ、ケール、パクチーと、とにかく健康に良い材料ばかりを揃えていることだ。最上級のジューサーとして知られるNorwalkの商品を使うことで、材料の果物や野菜に含まれる酵素や栄養の破壊を最低限に抑えている。

パクチー入りスムージー Cleansing Cilantro(Sサイズ195ペソ=約470円)

パクチー入りスムージー Cleansing Cilantro(Sサイズ195ペソ=約470円)

キャシーさんは「食の安全にもこだわっている」と胸を張る。食材の供給者である農家には化学肥料の使用を一切禁じ、自然の食材を確保している。2週間に1度は農家まで足を運び、チェックする。仕入れた食材は使用するまでに水と酢で洗浄を繰り返す。食品の衛生管理は徹底している。

だがmooshiのメニューはどれも高い。フィリピンのスターバックスではフラペチーノひとつが140~195ペソ(約340円~470円)で「お金持ちの人しか行けない高級店」(セブの中級ホテルの従業員ティチィさん)というイメージがある。それに比べ、mooshi一番の売りであるグリーンジュースは95~325ペソ(約230円~780円)する。高級なブランドとされるスターバックスを超えるプライシング。

それでもmooshiはクラリスさんのように健康を意識しなければならない人にとってとてもありがたい場所。フィリピン人にとって健康に良いものは美味しくないというイメージがある。だが、mooshiの飲み物や食べ物は美味しいと評判。セブのコミュニティで少しずつ友だち伝いによって広まってきているようだ。「友だちの紹介で初めて来て気に入ったから、違う友だちを連れてまた来た」(フィリピン大学セブ校に通う女子大生)

セブの経済成長と軌を一にして、mooshiはiMooshiMoosh今後も成長を続けられるか。アンへレスさん夫妻は「(mooshiを)発展途上国生まれの“次のスターバックス”なる人気スポットにしたい」と願う。

モリンガを練りこんだフェットチーネ・パスタ(245ペソ=約590円)

モリンガを練りこんだフェットチーネ・パスタ(245ペソ=約590円)

友だちと一緒にmooshiに来店するフィリピン大学セブ校の学生たち

友だちと一緒にmooshiに来店するフィリピン大学セブ校の学生たち