フィリピン・ネグロス島のみやげもの屋は“ソーシャル”だった! 看板商品を作るのは元警備員

0927久保田さん1みやげ物屋「SUBIDA」の入り口(フィリピン・ネグロス島バレンシア)

フィリピン・ネグロス島南部のバレンシア町に、貧困層の生活向上を目指すソーシャルなみやげ物屋がある。店名は「SUBIDA」。SUBIDAの最大の特徴は、地元の材料をベースにしたアクセサリーやかばんなどの制作を貧困層に発注し、彼らの収入アップを実現していること。ここ半年は黒字続きで、1カ月の平均の売り上げは10万~20万ペソ(22万~44万円)だ。

■収入は3倍アップ

SUBIDAのソーシャルな要素は2つある。1つは貧困層への支援だ。

設立当初、SUBIDAのパートナーとなる手工芸品の職人を探していたオーナーのマイク・アラノさん。知人にかつて貝殻でイヤリングを作り売っていたが儲からず、警備員の仕事を当時していたジョビンショ・バアイさんを紹介され「商品はすべて私が買い取るから、貝殻の代わりにココナツでイヤリングを作ってくれないか」と説得した。

手工芸品の制作に集中できるようになったジョビンショさんは、現在は月に50~100個売れている竹のアクセサリーやキッチンツールを自宅で作っている。1日の平均収入は警備員の時の200~300ペソ(約440~660円)から900ペソ(約2000円)へと3倍にアップし、貧困状態から抜け出すことができた。マイクさんは「将来は新しい職人に技術を教える立場になってほしい」と期待する。

またSUBIDAは、農村出身で低学歴のきょうだい(19歳、21歳)を従業員として雇っている。収入は1カ月7000ペソ(約1万5400円)。これに加えてボーナスも支給する。泊まる場所や食事も無料で提供する。「2人は働き始めてから英語やコミュニケーションのスキルがすごく上達した。スキルが向上すれば給料も上げるつもりだ」とマイクさんは誇らしげだった。

■海外から注文殺到

もう一つのソーシャルな要素はエコだ。

SUBIDAは「ごみ」を価値の高い商品に生まれ変わらせている。古雑誌やプルタブ、プラスチックを利用したおしゃれなイヤリングやネックレス、キーホルダーが店頭に並ぶ。こうしたアップサイクル(元の商品より価値の高い商品を生むリサイクル)を通してエコフレンドリーなビジネスを実現している。

また、ソーシャルビジネスであっても利益をあげ続けることは必要不可欠だ。SUBIDAは黒字経営。看板商品パンダン(アジア・アフリカなどの熱帯地域に生息する香りのよい植物)のリュックは、1カ月の生産できる数が120個なのに対して「1000個の注文が来ている」(マイクさん)という。4カ月前にはホームページを開設し、ウェブサイトで海外の人に向けて販売を始めた。「Philippine Souvenirs 」と検索すると2ページ目に表示されるようになり、現在は海外から注文が殺到している。

SUBIDAの店頭に並ぶココナツ、竹、貝殻、紙、プルタブなどでできたアクセサリー

SUBIDAの店頭に並ぶココナツ、竹、貝殻、紙、プルタブなどでできたアクセサリー