元イスラエル兵がガイド役! パレスチナ自治区にフォトジャーナリスト安田菜津紀さんも注目するツアーがあった

パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のヘブロン市で撮影した写真を見せながら、元イスラエル兵が抱える葛藤について話す安田菜津紀さんパレスチナ自治区ヨルダン川西岸のヘブロン市で撮影した写真を見せながら、元イスラエル兵が抱える葛藤について話す安田菜津紀さん

パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のヘブロン市で、市内にあるイスラエル入植地を訪問するスタディツアーがある。最大の魅力は、観光のようにただ行くだけではなく、元イスラエル兵がガイド役になって、かつての自分の任務地などを案内することだ。兵士だったときにパトロールと称してパレスチナ人を威圧していた過去を、ツアー参加者へ自らの言葉で伝えるガイドもいるという。

このツアーを企画・運営するのは、元イスラエル兵らがメンバーのNGO「ブレイキング・ザ・サイレンス」(BTS)。イスラエルのパレスチナ占領を終わらすことを目的とする団体だ。活動の柱は、パレスチナ人に対してイスラエル兵が任務地で振るった暴力を証言として集めること。およそ1200人がすでに、兵役時代(18歳で入隊し、兵役期間は女性2年、男性3年)に抱えた葛藤を吐き出した。ツアーガイドを務めるのは、そうした元イスラエル兵らだ。

このツアーの狙いは、ヘブロン市でイスラエルがいかに軍事的に大きな存在になっているかをイスラエル国民へ伝えること。そのため元イスラエル兵だけからではなく、パレスチナ人の話も聞く。イスラエル兵へ非暴力で抵抗する若いパレスチナ人活動家、砂漠のなかでテントや自然の洞窟に住んでいたパレスチナ人を訪ねることもある。さまざまな証言をもとに参加者は「占領」について話しあう。「イスラエルによるパレスチナ占領」をパレスチナ人の視点からも考えるのが特徴だ。

外国人もツアーに参加可能。ガイドはヘブライ語以外に英語も話す。8時間かけてヘブロンをめぐる。料金は120新シュケル(約3700円)。

フォトジャーナリストの安田菜津紀さんも2018年2月にこのツアーに参加した。その際に、ガイドの元イスラエル兵アブネルさん(33)から「平日はパレスチナへ実弾で威嚇を繰り返し、週末は家族と何気ない会話をする。『今週はどうだった?』という家族の質問になんて答えればいいかわからなかった」という戸惑いを聞いたという。

ツアーのコースには「ヘブロン」と「サウス・ヘブロン・ヒルズ」の2つがある。

ヘブロンのコースで回るのは7つの場所。①ヘブロン郊外の入植地キリヤットアルバにあるバールーフ・ゴールドシュテインの墓②ベイトハダサ入植地にある総主教区の墓③ヘブロン市内の中心にある旧卸売市場④ヘブロン旧市街のシュハダー通り⑤4つのイスラエル入植地(アブラハムアビーノ、ベイトロマーノ、ベイトハダサ、テルルメイダ)⑥テルルメイダ近郊のパレスチナ人非暴力活動家⑦「ザ・ハウス・オブ・コンテンション」、「ザ・ハウス・オブ・ピース/ラジャビ・ハウス」、「ザ・ブラウン・ハウス」と呼ばれる2014年にキリヤットアルバへ設置された新しい入植地。