植物園が街へ“進出”!? コロンビア第2の都市メデジンの大都会に8000本を植樹

コロンビア・メデジンにあるハルディン・ボタニコの職員、フアン・カスティージョさん

コロンビア・メデジンの中心部にあるハルディン・ボタニコ(植物園)は、園内だけでなく、街中の植物を増やす活動に力を入れてきた。道路沿いや公園などはもちろん、動物園や会社の敷地内など、メデジン市内に2018年1年で8000本を植えた。市民が自然をより身近に感じ、生物多様性や環境保護に興味をもつきっかけになることを目指す。

ハルディン・ボタニコはその一画に熱帯雨林を再現するほか、ヤシやマグノリア、絶滅の危機に瀕した植物を育てている。入園は無料。市民の憩いの場としてリフレッシュや待ち合わせなどに使われる。

しかし、ハルディン・ボタニコの活動は園内にとどまらない。園外の活動を担うのは植樹プロジェクトチームだ。その一員のフアン・カスティージョさん(26)の仕事は、街を歩いて新たに木を植える場所を探し、植える木の種類を選び、植樹後のメンテナンスをすることだ。最低でも1.3メートルの大きさになるまで苗木を育て、それを植える。公共の場所であればメデジン市の許可を得る必要がある。民間企業や動物園などから依頼を受けることもある。

カスティージョさんによると、植樹後、問題なく育つのは全体の65~70%くらいだという。失敗の要因は、「木の病気」「苗木の窃盗」「草刈りなどのときに誤って木が傷つけられること」の3つだ。上手く育たなかったときには、新たに苗木を植え直す。植樹後1年間は3カ月ごとに状態を確認する。それ以降は、枯れている、折れそうだ、などという市民からの報告に基づいてその都度対応する。「長い寿命をもつ木にとって、1年はとても短い。本当はもっと長期的にメンテナンスを行いたい」とカスティージョさんは言う。

市民との交渉が必要な場合もある。例えば、住宅に近い道路沿いに木を植える際、住民からは木が家の敷地に侵入するのではないかと心配されたり、落ち葉の被害を懸念したりする声があがる。これに対し、葉が落ちない木を選ぶことなどを伝え、住民が納得してから木を植える。

このプロジェクトには、メデジン市の施策が関係している。メデジン市は、公共の交通機関がコロンビアの中で最も発展した街だ。マイカー制限や自転車専用道路の設置など、環境に配慮した取り組みも同時に進める。メデジン市は、2018年の1年間で市内に3000本の木を植える目標を立てた。ハルディン・ボタニコは、このプロジェクトの遂行機関としてチームを発足させ、目標の2.5倍を超える8000本を植えることに成功した。「木を植えてもらってよかった」「きれいになって嬉しい」という市民の声や笑顔が植樹プロジェクトチームの励みだ。

コロンビアは、世界第2位の生物多様性を誇る国だ。しかし、都市に住むコロンビア人の多くはその事実を知らない。「家の屋上に花を植えるだけでも貢献できる」(ハルディン・ボタニコの職員の一人)。チョウが寄ってきて蜜を吸い、花粉をつけて花の繁殖につながるからだ。「日々の生活から、緑を目にする機会、自然に触れる機会を増やすことで、環境保護や生物多様性をもっと身近に感じてほしい」(同)

ハルディン・ボタニコが期待するのは、この活動を知った市民にハルディン・ボタニコに足を運んでもらうこと。園内には、植物に関する豊富な情報や専門家、研究施設が充実している。また、ガーデニングや盆栽、植物を使った料理などのワークショップも取りそろえ、多様なニーズに応じられる。市民の心の中へ“進出”するハルディン・ボタニコの挑戦は続く。

散歩や待ち合わせ場所として、気軽に利用されるハルディン・ボタニコ(コロンビア・メデジン)

散歩や待ち合わせ場所として、気軽に利用されるハルディン・ボタニコ(コロンビア・メデジン)