避難先のコロンビアで地域に溶け込むベネズエラ難民、カギは学校や財団でのボランティア!

自分で作ったリボンを手にするジュリアナさん(左から2人目)と子どもたち。家の壁はトタンでできている(コロンビア・メデジンのアヒサル地区)自分で作ったリボンを手にするジュリアナさん(左から2人目)と子どもたち。家の壁はトタンでできている(コロンビア・メデジンのアヒサル地区)

コロンビアの見知らぬ土地に来て、学校や財団のボランティアで地域に溶け込むベネズエラ人がいる。ジュリアナ・リンコンさん(36)だ。やって来た当初は、コロンビア人に汚い言葉を罵られ、子どもの安全が不安になった。「ボランティア活動はコロンビアの文化に入りこむためにやっている」とジュリアナさんは真剣な眼差しで語る。

■お前はクソ野郎

1年早く1人で移り住んだ夫を追い、ジュリアナさんは2018年9月、ベネズエラ西部のスリア州から子ども2人を連れてコロンビアのメデジンにやってきた。いま住む場所は、コロンビア人の国内避難民が多いアヒサル地区だ。

最初は、コロンビア人に睨まれたり、背中を向けられたりしたこともある。極めつけは「イホ・デ・プータ(クソ野郎)」という侮辱する言葉を面と向かって言われたことだ。

「(こんな国に住んで)10歳の男の子と5歳女の子の2人の子どもは大丈夫なのだろうか。アヒサルで暮らす人たちのコミュニティの中に入ったほうがいい」。ジュリアナさんはこう思った。

2019年の初めごろから、近くにあるキリスト教財団で食事を配ったり、ミサを手伝ったりするボランティアを始めた。人手が足りないことを知り、ジュリアナさんは自ら手伝いたいと申し出た。「先週の土曜日も昼食を配ったよ」と胸を張る。

2019年6月ごろから、子どもが学校に通い始めたのをきっかけに、学校のボランティアを始めた。子どもを学校に送り迎えする際に、自分から教師に話しかけた。信頼を徐々に勝ち取り、手伝いの依頼を受けたという。

この学校は子どもの数が過剰で、教師は人手に困っていた。ジュリアナさんは週に1度学校に行き、子どもたちの宿題を手伝ったり、遊び相手になったりした。「2019年11月には活動が評価され、認定証を学校からもらった」と誇らしげだ。

■家賃は4800円

ジュリアナさんの活動は学校の中だけにとどまらない。

2019年10月からは、国内避難民を支援する地元のNGO「COAPAZ」の活動に参加し始めた。毎日ではないが、子どもを学校に送った後の正午から午後5時の空き時間に、ごみのリサイクルを担当する。

ボランティア活動のおかげで、ジュリアナさんはコミュニティに溶け込めた。最近は近所の人からネイルアートやリボンの制作を頼まれるほどだ。ネイルアートの料金は1回1万ペソ(約320円)。多い時は月に3回頼まれるという。リボンは2000〜3000ペソ(60~90円)で売る。「どんな小さな仕事でも私はする」と語る。

ジュリアナさんには幸い、コミュニティに溶け込むための活動をする金銭的な余裕があった。ベネズエラ人の夫の仕事は食品や建材の運送。1カ月に80万~90万ペソ(2万5600〜2万8800円)を稼ぐ(今は仕事を辞め、好条件の仕事を得るために就活中)。ちなみに1カ月の家賃は15万ペソ(4800円)と安い。ジュリアナさんが働かなくても生活できた。

ジュリアナさんは、ベネズエラにいたころ今よりも裕福な生活をしていたという。夫は会計士、ジュリアナさんは大学で豚の飼育の仕事をしていた。

木材やトタンを組み合わせて作った今の家は、夜は冷え、雨漏りもする。「今は金銭的な余裕がないけれど、余裕が出たらアヒサル地区のなかでもっと安全な場所に引っ越したい」と陽気な笑顔で語る。

ジュリアナさんの自宅。室内にもかかわらず地面は剥き出し。木材を組み合わせて作った屋根には隙間もある(コロンビア・メデジンのアヒサル地区)

ジュリアナさんの自宅。室内にもかかわらず地面は剥き出し。木材を組み合わせて作った屋根には隙間もある(コロンビア・メデジンのアヒサル地区)