リサイクルに熱心な寺がタイにあった! ごみの分別は「徳を積むこと」

ごみ分別の意識を変えようとボランティア活動に励むパラニー・ケアウクイルデゥシーさん。彼女が手に持つのは、牛乳パックをリサイクルして作られた屋根のタイルだ(タイ・バンコクのワット・チャデーンで)ごみ分別の意識を変えようとボランティア活動に励むパラニー・ケアウクイルデゥシーさん。彼女が手に持つのは、牛乳パックをリサイクルして作られた屋根のタイルだ(タイ・バンコクのワット・チャデーンで)

リサイクルの精神は仏教の輪廻転生の考え方に通ずる――。タイ・バンコクに、ごみの意識を変えようと啓蒙活動する寺がある。名前はワット・チャデーン(チャデーン寺)。この寺でごみのリサイクルのワークショップを企画するパラニー・ケアウクイルデゥシーさん(40)は「ごみを分別することは徳を積むことにもなる」と話す。

この寺は、捨てられたペットボトルから僧衣を作る取り組みで有名だ。一着の僧衣を作るために15本のペットボトルがポリエステルとして使われる。これは僧衣の原料の約3割に相当するという。それ以外に綿も使われる。ペットボトル→ポリエステル→僧衣というリサイクルは「すべてのものはすべて生まれ変わる」という仏教の考えに基づくものだ。

この寺の境内では、僧衣以外にも、あらゆるところでリユース・リサイクル品が使われている。電線やケーブルがほうきの穂先に、ペットボトルのふたを集めたものが花瓶に、車のタイヤが床面のタイルになる。

「ごみの分別方法を聞くだけでは何の意味もない」とパラニーさん。ワークショップでは、ごみがリサイクルされるまでの過程を体験してもらう。例えば、牛乳パックを再利用したタイルを作って、境内の施設の屋根にそのタイルが用いられている様子を見させるという。

ワークショップに来るのは地元の人だけでない。政府機関や民間企業に勤める人、外国人観光客などだ。目的は、ごみに対する認識を変えること。パラニーさんは「初めはこのコミュニティでごみの分別を広めるためにワークショップを始めた。だがタイ以外から多くの人が来ることで、世界中でごみへの意識が広がるのでは」と期待を抱く。

ただタイではまだまだごみへの意識は低い。タイの環境研究所によると、2015年時点でタイ国内で適切に処理されたごみの割合はわずか31%だ。

パラニーさんは「分別しなくてはいけないのはみんな知っている。だけど分別する責任を感じている人は少ない」と現状を語る。タイ国内の学校では現在、積極的にごみを分別しているといわれる。だがバンコク市内のコンビニには1種類のごみ箱しか置かれていないのが現状だ。