6歳で両親を亡くしたカチン族の少年、ヤンゴンの養育施設に「自分の居場所」見つける

たくさんの友だちと青春を謳歌するノーサーイくん(ミャンマーのヤンゴンにある養育施設「ドリームトレイン」で撮影)たくさんの友だちと青春を謳歌するノーサーイくん(ミャンマーのヤンゴンにある養育施設「ドリームトレイン」で撮影)

「(生まれ故郷のミャンマー・シャン州には)もう帰りたくない」。これは、同国最大の都市ヤンゴンで日本のNGOジャパンハート(本部:東京・台東)が2010年から運営する養育施設「ドリームトレイン」で暮らすカチン族の少年、ノーサーイくん(16)の言葉だ。ノーサーイくんは2012年、病気で両親を亡くした。シャン州から逃れて8年、1300キロメートル離れたヤンゴンに自分の居場所を見つけたようだ。

■誕プレもらったことなかった

ノーサーイくんは言う。「ドリームトレインではみんなが友だちだよ。楽しい!」。彼にとってドリームトレインは“家族”のようなものだ。

シャン州にいたころ、ノーサーイくんは誕生日を祝ってもらったことはなかった。誕生日プレゼントを初めてもらったのは、ドリームトレインに来てからだ。

2019年9月に迎えた16歳の誕生日には、Tシャツとボールペンをプレゼントしてもらった。「Tシャツはもったいなくて、一度も着たことがないよ」と嬉しそうに語る。

ノーサーイくんにとってドリームトレインで過ごす毎日は楽しくて仕方がないようだ。学校がある日の放課後は、施設のなかでみんなで机を並べて復習する。「大好きな友だちと話しすぎて、先生(スタッフ)からお尻ペンペンされるよ」と笑う。

休みの日を過ごすのもみんな一緒。「みんなでお出かけするのが大好き」とノーサーイくん。少し離れたバスケットボールコートへ行き、年下の子どもと一緒に遊んであげる。「いままでで一番楽しかった思い出は先生や友だちみんなで行ったバガン旅行」。年に一度の遠出が何よりも楽しみだという。

クリスマス会も毎年ある。キリスト教徒はもとより仏教徒も参加して歌を歌う。ノーサーイくんが一番好きな歌はアイルランド出身のバンド「ウエストライフ」の英語曲「マイ・ラヴ」。恥じらいながら口ずさむ。

■故郷に帰りたくて毎日泣いてた

一見すると、友だちが大好きなごく普通の16歳の少年。だがノーサーイくんは生まれる前、病気で父を失った過去をもつ。菓子を作って売っていた母も、ノーサーイくんが6歳のときに亡くなった。

ノーサーイくんと兄2人の3兄弟は、農業を営む祖父母の家に預けられた。孫の将来を案じた祖父母は、教育を受けさせようと2番目の兄と末っ子のノーサーイくんの2人をドリームトレインに送り出した。そのときノーサーイくんは8歳、すぐ上の兄は11歳。高校生だった一番上の兄はシャン州に残った。

ドリームトレインにやって来た当初、「頼れるのは兄だけだった。寂しくて毎日泣いていた。故郷に帰りたかった」(ノーサーイくん)。

ドリームトレインでの8年間で自分の居場所を見出したノーサーイくんは高校を卒業したら、大学で勉強してエンジニアになりたいという夢をもつ。