日本でアフリカ人差別をなくしたい! AYINAがホームステイプログラム本格化へ

ジャパンホームステイでの食事風景。日本酒をおともに夜更けまで家族と語り合うジャパンホームステイでの食事風景。日本酒をおともに夜更けまで家族と語り合う

横浜市に本部を置くNPO法人AYINA(アイーナ)は5月から、在日アフリカ人を対象とする日本でのホームステイプログラムを本格化させる。日本で1万6000人以上が暮らすとされるアフリカ人に対する差別をなくす最初の一歩にするのが狙い。ホームステイプログラムの実現を目指して3月4日からの1カ月間、100人のマンスリーサポーターを募集中だ。

■アフリカ人をまずは知る

ホームステイプログラムの名称は「ジャパンホームステイ」。東京などの都市部ではなく、日本の地方に滞在してもらうのが特徴だ。アフリカ人とこれまでかかわる機会がなかった日本人と在日アフリカ人が交流する機会を生み出す。

AYINA副代表の内藤獅友さん(34)は「日本人が在日アフリカ出身者に対して抱く偏見や恐怖感は、相手を知らないがゆえのものがほとんど。その壁を打ち砕きたい」と説明する。この考えに基づき、AYINAはジャパンホームステイや在日アフリカ人と日本人の交流会だけでなく、日本食をつくるワークショップなど文化交流イベントを打ち出していく。

ジャパンホームステイの参加者の交通費やワークショップの講師への謝礼など、活動に必要な資金は毎月7万円。活動資金を得るためAYINAは、毎月500円以上の寄付をしてくれるマンスリーサポーターを募集中だ。告知を始めて10日で60人以上のサポーターが集まったという。

■差別に怯えながら暮らす

今回スタートするプロジェクトは、AYINAを2015年に立ち上げ当初からやりたかったことだ。代表理事を務めるゾマホン・スールレレさん(37)も西アフリカのベナン出身で国費留学生として山形大学に留学。その後、日立製作所で働く在日アフリカ人だったからだ。日本に来て良かったこともあった半面、差別も経験したスールレレさんは、差別を感じないで済む環境をつくりたいと考えるようになった。

内藤さんも思いは同じだった。その気持ちを強くさせたのが、2019年に生活拠点のベナンから日本に一時帰国したときのこと。日本に10年以上暮らし、都内の大学に通う学生から直接話を聞いた。「なんで黒人がここにいるの?と大学の購買部に並んでいるとき、後ろの日本人学生に言われたと話してくれた。常にネガティブなことを言われるのではないかと怯えていた」(内藤さん)

一時帰国の最中に内藤さんは多くの在日アフリカ人の話を聞いた。4~5時間にわたって話をしてくれる人もいた。日本人と在日アフリカ人がお互いを知り、つながる場が必要だと確信した。

■5つ星レストラン以上!

AYINAは2020年1月、トライアルとして第一回ジャパンホームステイを山形県で開催した。やってきたのはケニアとタンザニアの男性。2泊3日の滞在期間中、ホームステイはもちろん、市民との交流会にも参加してもらった。交流会には中国人、台湾人、フィリピン人を含め、30人が集まった。それぞれの国の文化や日本で暮らして驚いたことの紹介、スワヒリ語を使ったゲームで盛り上がった。

参加したケニア人の男性は「日本で暮らすのは4年目。だけど仕事や勉強で忙しく、ほかの場所に来たのは初めてだった。アットホームな雰囲気の中でご飯を食べたのは、5つ星レストラン以上のものだった」と大満足。交流会に参加した市民からは、次にホームステイをするときには受け入れたいとの申し出もあった。

「在日アフリカ出身者とのつながりも、ホームステイやイベントに参加してくれる日本人とのつながりもできつつある。あとはやるだけ。日本で働きたいアフリカ出身者のための企業訪問や、オンライン交流会などいろいろと挑戦してみたい」と内藤さんは意欲を燃やす。

ヒッポファミリークラブと協力して山形で開催した交流会のようす。「こんなイベントをまた開いてほしい」と日本人参加者からも好評だった

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交流会では日本の「おもしろい・好きなところ」と「好きでないところ」を発表してもらう。在日アフリカ人が何を考えているのかを知ってもらう

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