「開発と平和のためのスポーツ国際デー」の4月6日、世界保健機構(WHO)と国際サッカー連盟(FIFA)は共同でBeActiveキャンペーンを立ち上げると発表した。BeActiveキャンペーンは、サッカーチームや選手がSNSを使って世界中の人たちに「体を動かして免疫力を高めよう」というメッセージを伝える運動。「今、歴史上初めて世界のみんなが同じチームにいる。私たちは必ず(新型コロナウイルスに)勝つ」と、FIFAのインファンティーノ会長は強く語る。
■テニスのジョコビッチも
BeActiveキャンペーンでは、だれもが自宅で運動する動画やメッセージなどを「#BeActive」というハッシュタグをつけ、ツイッターやインスタグラムに投稿できる。これまで動画をあげたのは、FIFAに加盟する各国のサッカー協会、プロサッカーチーム、サッカーや他のスポーツ選手、世界の運動愛好家たちだ。
有名どころでは、マンチェスター・ユナイテッドで活躍した名選手リオ・ファーディナントさん、テニス界からは世界4大大会で17度の優勝を誇るノバク・ジョコビッチ選手ら。FIFA女子ワールドカップ(W杯)の公式アカウントも、2011年女子W杯の優勝メンバーである永里優季選手が運動する動画を紹介している。
BeActiveキャンペーンを通じてWHOは、ひとりでできる運動を推奨する。インターネットの動画を見ながらやる筋トレやダンス、縄跳びなどだ。目安となる運動時間は大人で1日30分以上、子どもは60分以上。
■ピケも、セルヒオ・ラモスも
BeActiveキャンペーンの広告動画は、世界各国のサッカー選手を起用し、こんなメッセージを伝える。
「私たちはみんな違う。けれども協力すればもっと強くなれる。アクティブに、ポジティブに、そして強くいよう。頑張ろう!」
この広告動画でユニークなのは、ライバルチームの選手を同時に起用することだ。例えば、スペインサッカーリーグ「ラ・リーガ」の選手が登場するスペイン語バージョンでは、ライバルであるバルセロナFCのジェラール・ピケ選手とレアル・マドリードFCのセルヒオ・ラモス選手が同時に同じセリフを語る。ライバルチームの選手が同時に訴えかけることで、インファンティーノ会長の言う「同じチーム」を強く打ち出す作戦だ。
それ以外にも、英国プレミアリーグからは北西イングランドのライバル、リバプールFCとマンチェスター・ユナイテッドFCの選手が、中国スーパーリーグからは北京国安FCと上海申花FCの選手がそれぞれ動画に登場。その国の言葉でメッセージを語るため、より多くの人に伝わる。
■インドのライバルチームも
注目すべきは、インドのIリーグで100年あまりもライバル関係にあるモフン・バガンACとイースト・ベンガルFCがそろってキャンペーンに協力していることだ。コルカタをホームとする両チームは、2019〜20年シーズンのリーグ戦でそれぞれ1位、2位だった。ダービーの試合ともなると8万5000人収容のスタジアムはいっぱいになる。
この2チームは、実はライバル以上の因縁がある。モフン・バガンACをサポートするのは、コルカタを州都とする西ベンガル州に昔から住む人たちのコミュニティーグループ「ゴティ」だ。
これに対してイースト・ベンガルFCは、コルカタの東側で暮らす人たちのコミュニティーグループ「バンガル」から支持を受ける。バンガルにはバングラデシュが独立した際、コルカタへ逃れてきた移民も多い。経済的に裕福なゴティとブルーカラーが多いバンガル。サッカーの試合で、それぞれのアイデンティティーと日ごろの不満がぶつかり合うのだ。
そんな両チームの選手が参加したキャンペーン動画はヒンディー語とベンガル語の2パターンがある。各チームの主力選手が声を掛け合い、協力することの大切さを訴えている。
モフン・バガンACのキャプテンでゴールキーパーのシルトン・ポール選手は、インドの新聞タイムス・オブ・インディアにこう語る。
「この非常事態にチームを代表してFIFAのキャンペーンに参加できることはとても嬉しい。今はコンディションを維持するため、家でしっかりトレーニングしている。あと映画を見たり、料理をしたりしているよ」