ミャンマーの少数民族もクーデターにノー!「軍の言葉には騙されない」

カレン族の旗を掲げ、民族衣装を着て抗議する(写真はバゴー在住のハンさんが提供)カレン族の旗を掲げ、民族衣装を着て国軍に抗議する(写真はバゴー在住のハンさん提供)

進まないNCAは軍のせい

だが現実は、NLD政権のもとでNCAはあまり進まなかった。軍出身のテインセイン政権(2011〜2015年)が8つの武装組織とNCAを締結したのに対し、NLD政権は2つにとどまる。NLDは成果を残せなかった、と一部で批判の声も上がる。

これについて、バゴー管区に住むハンさんはこう語る。

「この5年間でNCAが進まなかったのはNLDのせいではない。軍のせいだ。軍はNLDの邪魔をするため、武装組織と衝突し続けた。邪魔がなければもっと多くの武装組織と停戦合意できたはず」

2008年に軍事政権が制定した憲法は、防衛省、内務省、国境省の各大臣を軍が直接選ぶと定める。NLDは軍隊を指揮する権限をもたないのだ。

動かぬ武装組織

少数民族の間でクーデターに反対する声が上がる中、武装組織の動きは鈍い。

クーデターが勃発した翌日(2月2日)、カレン民族同盟(KNU)やシャン州復興評議会(RCSS)などの武装組織は、クーデターを批判する声明を発表したものの、具体的なアクションは起こしていない。

カレン州にあるタイとの国境の町ミャワディでは、住民がKNUに対して一緒に抗議するよう要請を出した。しかしKNUはそれに加わらず、静観を続けているという。

「KNUが表立ってデモをすれば、武装組織の反乱ととらえられる。そうなれば武装組織からミャンマーを守るという大義を国軍に与えてしまう。KNUが沈黙するのも理解できる」とハンさんはKNUの難しい立場を代弁する。

国軍よりの行動を見せる武装組織もある。ミャンマー西部のラカイン州をベースとするアラカン軍(アラカン族で構成)だ。

「ラカイン州ではアラカン軍がデモを禁止する命令を出したと聞く。それを破ると殺される。あいつらは国軍と同じだ」。ハンさんはアラカン軍に対して怒りをにじませる。

国軍は2月12日、アラカン軍を支持するとされるアラカン国民党のエイマウン元党首を恩赦により釈放した。2月3日には国を主導する国家統治評議会のメンバーにアラカン国民党の議員1人を指名した。

*追記:2月21日、ミャワディでKNUの兵士が抗議デモに参加したと、アルジャージーラの記者がツイッターで報告した。国軍との衝突には発展してはいないが、緊張が高まっている。

カレン州ミャワディで抗議デモをするカレン族の人たち(写真はバゴー在住のハンさん提供)

カレン州ミャワディで抗議デモをするカレン族の人たち(写真はバゴー在住のハンさん提供)

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