ミャンマーの少数民族もクーデターにノー!「軍の言葉には騙されない」

カレン族の旗を掲げ、民族衣装を着て抗議する(写真はバゴー在住のハンさんが提供)カレン族の旗を掲げ、民族衣装を着て国軍に抗議する(写真はバゴー在住のハンさん提供)

カレン族やシャン族などミャンマーの少数民族も、クーデターを起こしたミャンマー国軍への抗議の姿勢を強めている。同国東部のカレン州に住むポーレさんは「私たちは長い間、国軍から迫害を受けてきた。軍は少数民族との和平を進めると言うが、クーデターを正当化する口実としか思えない」と不信感を口にする。ミンアウンフライン国軍最高司令官は2月8日のテレビ演説で、少数民族との和平を最優先に進めると発表した。

■軍は放火・殺人・搾取してきた

ポーレさんがクーデターを支持しない理由は、軍部の言う「少数民族との和平」を信じられないからだ。

ミャンマーでは人口の7割を占めるビルマ族で構成する国軍と、少数民族の間で世界最長の内戦が繰り広げられてきた。国軍は少数民族が住む地域に押し入り、放火や殺人、レイプといった迫害を加え、ヒスイやルビー、チーク木材といった地域の資源を搾取してきた。カレン族のポーレさんも若いころ、国軍の迫害を恐れ、タイの難民キャンプに避難した経験をもつ。軍への不信感は根強い。

クーデターで権力を掌握した国軍は2月8日、「より多くの民族武装組織と全国停戦協定(NCA)を結び、永久の平和を作り上げる」と発表した。

NCAとは、武力による衝突をやめ、対話を通して民主主義と少数民族の自治を樹立しようとする協定。現在、ミャンマー政府は民族武装組織の半数近くにあたる10のグループとNCAを結ぶ。

ポーレさんはこの軍の発表を全否定する。「国軍は今まで私たちを騙し続けた。今回の発表もすべてうそ」

政治評論家のタンソーナイン氏も英字メディア「イラワジ」で、独裁的な軍が少数民族の求める自治や平等を進めるとは考えにくい、と話す。

■7つのうち5つの州で第一党

クーデターに抵抗するのはカレン族だけではない。ミャンマー全土の少数民族が抗議デモに参加する。

デモが起こったのは、少数民族が多く住むカチン、カレン、カヤー、チン、ラカイン、モン、シャンの各州。民族衣装を着た多くの人たちが「民主主義を返せ」と叫びながら、主要道路をねり歩く。

観光地として有名なシャン州のインレー湖では、シャン族の人たちが水上デモを敢行。百数隻のボートを集め、「アウンサンスーチー氏を解放しろ」「クーデターにノー」と書いたボードを掲げた。

そもそも多くの少数民族は、国軍ではなく、1988年から民主化運動を先導するアウンサンスーチー氏を支持する。2020年11月の総選挙ではスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が、上院と下院で約6割の議席を獲得した。憲法が議席の4分の1を軍が指名できると明記する中で、この結果は驚異的だ。

少数民族が多数派を占める小選挙区でもNLDの政治家が当選。7つの州のうち、5つの州議会でNLDが第一党になった。

NLDが2016年に政権の座に就いて以降、アウンサンスーチー氏は少数民族との対話を重視してきた。政府、軍、少数民族の代表が一堂に会し、少数民族の自治に向けて話し合うパンロン会議。アウンサンスーチー氏は、自身の父であり、独立の英雄でもあるアウンサン将軍が1947年に開催したこの会議を2016年に再開させた。意見を聞こうとするアウンサンスーチー氏に姿勢に多くの少数民族が期待する。

ポーレさんは「アウンサンスーチー氏は素晴らしいリーダー。民主的なNLDしか少数民族との和平を実現できない」と言い切る。

■進まないNCAは軍のせい

だが現実は、NLD政権のもとでNCAはあまり進まなかった。軍出身のテインセイン政権(2011〜2015年)が8つの武装組織とNCAを締結したのに対し、NLD政権は2つにとどまる。NLDは成果を残せなかった、と一部で批判の声も上がる。

これについて、バゴー管区に住むハンさんはこう語る。

「この5年間でNCAが進まなかったのはNLDのせいではない。軍のせいだ。軍はNLDの邪魔をするため、武装組織と衝突し続けた。邪魔がなければもっと多くの武装組織と停戦合意できたはず」

2008年に軍事政権が制定した憲法は、防衛省、内務省、国境省の各大臣を軍が直接選ぶと定める。NLDは軍隊を指揮する権限をもたないのだ。

■動かぬ武装組織

少数民族の間でクーデターに反対する声が上がる中、武装組織の動きは鈍い。

クーデターが勃発した翌日(2月2日)、カレン民族同盟(KNU)やシャン州復興評議会(RCSS)などの武装組織は、クーデターを批判する声明を発表したものの、具体的なアクションは起こしていない。

カレン州にあるタイとの国境の町ミャワディでは、住民がKNUに対して一緒に抗議するよう要請を出した。しかしKNUはそれに加わらず、静観を続けているという。

「KNUが表立ってデモをすれば、武装組織の反乱ととらえられる。そうなれば武装組織からミャンマーを守るという大義を国軍に与えてしまう。KNUが沈黙するのも理解できる」とハンさんはKNUの難しい立場を代弁する。

国軍よりの行動を見せる武装組織もある。ミャンマー西部のラカイン州をベースとするアラカン軍(アラカン族で構成)だ。

「ラカイン州ではアラカン軍がデモを禁止する命令を出したと聞く。それを破ると殺される。あいつらは国軍と同じだ」。ハンさんはアラカン軍に対して怒りをにじませる。

国軍は2月12日、アラカン軍を支持するとされるアラカン国民党のエイマウン元党首を恩赦により釈放した。2月3日には国を主導する国家統治評議会のメンバーにアラカン国民党の議員1人を指名した。

*追記:2月21日、ミャワディでKNUの兵士が抗議デモに参加したと、アルジャージーラの記者がツイッターで報告した。国軍との衝突には発展してはいないが、緊張が高まっている。

カレン州ミャワディで抗議デモをするカレン族の人たち(写真はバゴー在住のハンさん提供)

カレン州ミャワディで抗議デモをするカレン族の人たち(写真はバゴー在住のハンさん提供)