クーデターで政権をとったミャンマー国軍へ抗議する在日ミャンマー人をサポートする日本人がいる。ヘイトスピーチなどの人種差別問題に宗教者の立場から取り組む「マイノリティ宣教センター」の渡辺さゆり牧師と、20年にわたり在日ミャンマー人の民主化運動を支える「在日ミャンマー市民協会」の熊澤新氏だ。両氏はそれぞれ、都内で先日あったクーデターへ抗議するハンガーストライキと、クーデターで犠牲となったミャンマー人の追悼会の開催を手助けした。
キリスト教徒のミャンマー人と祈る
「先生、助けてください!」。渡辺牧師のもとにはミャンマーでクーデターが2月1日に起きてからほぼ毎晩、在日ミャンマー人から「怖くて眠れない」「親せきが逮捕された」とSOSのメールが届く。
「昨夜は、(ミャンマー北部の)カチン州にいるおばから『町で銃撃戦が始まった。怖くて部屋の電気を消して、スマホの明かりもロンジー(ミャンマーの腰巻布)で隠している』というメールがあった」(渡辺牧師)
人口の9割を仏教徒が占めるミャンマーで、キリスト教徒はわずか6%。少数民族であるカチン族の多くはキリスト教徒で、国軍から長く迫害されてきた。
2000年から15年にわたって、ミャンマー最大の都市ヤンゴンで開かれるキリスト教徒との平和集会に通った渡辺牧師は、在日ミャンマー人のキリスト教徒とのつながりも深い。クーデターが起きて不安を募らせる彼らのためにオンラインの「祈り会」を開くことを思い立った。
インターネット上の文字データは軍に検閲されると聞き、オンライン会議アプリ「ズーム」のURLやIDは画像データにする。SNSで拡散するとネット上の口コミでミャンマー人や日本人のキリスト教徒、牧師ら約60人が朝9時にズームの祈り会に集まった。
祈り会を開くのは毎週金曜日の朝の40分間だ。初めに、この1週間で見聞きしたミャンマーの情報を暴行などの写真も含め、ミャンマー人が日本語で解説。次に日本人がミャンマー人に連帯する思いを語る。最後にミャンマーで毎晩行われる鍋たたき(非暴力不服従の抗議行動)で現地への連帯を表明する。祈り会は次回(3月26日)で7回目を数える。
渡辺牧師によると、在日ミャンマー人は、本国にいる仲間が脅され、殺されるのを見ているだけで自分たちは何もできない、というやり場のない苦しみを抱えているという。
「在日ミャンマー人たちを孤独にはさせない。祈り会を続けて、日本で一緒に生きる者としての責任を果たしたい」と渡辺牧師は力を込める。
渡辺牧師は、「軍事クーデタに反対する在日ミャンマー人非暴力活動委員会」(非暴力委員会)が3月20~22日に都内で主催したハンストの一環として開かれた追悼会へ、カレン族の牧師を手配。軍や警察に殺された200人以上(3月22日現在)の犠牲者を弔った。