ミャンマー国軍と戦うカレン民族同盟「軍政を年内に倒し、民主連邦制を実現させる」

KNUのスポークスマン、サウタウニー氏KNUのスポークスマン、サウタウニー氏

2月1日にミャンマーで軍事クーデターが起きておよそ1年。ミャンマー国軍と、民主主義を取り戻そうと市民が参加する人民防衛軍(PDF)の戦いは激化する一方だ。そうした中、国軍と長年対峙してきた少数民族の武装組織はどう思っているのか。1949年から67年にわたって国軍と内戦を繰り広げてきたカレン族で構成するカレン民族同盟(KNU)のスポークスマン、サウタウニー氏に話を聞いた。

国軍は信用できない

――KNUは国軍が起こしたクーデターをどう考えているか。

「我々は昔から民主主義を大切にし、独裁主義に反対してきた。今回のクーデターには断固反対だ」

――国軍はこの1月、ミャンマー各地の民族革命組織(少数民族の武装組織)との停戦を発表する一方、PDFに対しては徹底的に取り締まると警告した。少数民族に配慮する姿勢を見せ、PDFと民族革命組織を分断しようとしているともいわれる。KNUは国軍の動きをどうみるか。

「我々は昔から国軍を信用していない。裏切られ続けているからだ。最近であれば2015年、我々はミャンマー政府と停戦協定である国家停戦合意(NCA)を結んだ。そこには停戦だけでなく、対話により連邦民主制を実現していくという項目が入っていた。

以降、国軍や政府と対話を繰り返したが、彼らは聞く耳をまったくもたなかった。我々は2018年に一度、その合意を棚上げして対話を取りやめた。2020年に再開したとき、3つのステップで連邦制を進めると改めて合意した。だが舌の根も乾かぬうちに国軍は翌年、クーデターを起こした。

国軍はいつもそうだ。書面にサインしても守ることはない。国軍は政治的な交渉にかかわるべきではない」

――KNUは今後、国軍とどう向き合っていくのか。

「国軍はもう交渉する相手ではない。国軍はクーデターに反対する人を容赦なく殺す。12月にはカレン州のレイケイコー(タイとの国境に近い村)にも空爆をした。これを受け入れることはできない。

今は民主派グループと協力して、打倒国軍を目指している」

NLDと信頼関係築きたい

――KNUは、クーデターの前に政権をとっていた、アウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)をどう思っているか。

「NLDにも不信感がある。権力をもつと、少数民族の話を聞かなくなるからだ。2011年に民政移管される前までは、NLDと少数民族グループはお互い議論し、良い関係を築いていた。だがNLDは数年(25年)ぶりに参加した2015年の選挙で大勝すると、我々への態度を変えた。

国軍との関係を改善することを優先し、我々は二の次。そんなNLDに少数民族グループはみんな批判的だった」

――国軍は2017年、ミャンマー西部のラカイン州で掃討作戦を行い、数千人のロヒンギャを殺害したといわれる。この虐殺を告発されたアウンサンスーチー氏は国際司法裁判所(ICJ)で「不完全で誤解を招くものだ」と反論した。こういった姿勢もNLDに不信感をもつ理由か。

「そういった面もある。ロヒンギャ問題はたしかに歴史的、宗教的な観点から考えても難しい。だがこの時、罪のないロヒンギャが殺され、レイプされ、70万人以上が難民となった。これは、国際人道法に反する。KNUはミャンマー政府に対して、ロヒンギャへの攻撃をやめて対話によって解決するよう声明を出した。

だがNLD政権はこの時、国軍側に立った。ICJのロヒンギャ裁判でアウンサンスーチー氏は、ガンビア政府(西アフリカの国)の告発に異議申し立てをしている。これはNLDが国軍との関係を第一に考えていた証拠だろう」

* NLDが中心となって作った国家統一政府(NUG)は2月2日、アウンサンスーチー氏の異議申し立てを取り下げると発表した。

――クーデターが起きて2カ月後の2020年4月、国家統一協議評議会(NUCC)が設立された。これはどんな組織か。

「民主派グループのリーダーが集まる会議だ。5つのカテゴリーのグループから成る。NLD、その他の政党、民族革命組織、カチンやカレン、モンなどの州政府、春の革命グループ。春の革命グループとは、市民社会組織の集まりで、市民不服従運動(CDM=軍政に抵抗するため、公務員などが職務を放棄する運動)の参加者や反政府活動家、ユースや女性グループなどが入る。NUCCのメンバーは総勢100人以上。そのうち3、4人がKNUの代表だ。

NUCCは国会のようなもので、さまざまな意見を集約し、政策を決定する。その政策をNUGが実行していく。クーデターが起きて1年だが、多くのステークホルダー(利害関係者)を巻き込んだプラットフォームができたのは良かった。これは国軍を打倒した後、民主連邦制を実現するための足がかりとなる」

――NUCCができて、NLDとの関係はどう変わったか。

「NLDとの関係は少しずつ良くなっている。NUCCは誰かリーダーがいるわけではなく、全員が対等な立場で議論する場。NLDはクーデター前に比べて少数民族の話を聞くようになった。我々としてもこれを機に対話を重ね、NLDとの信頼関係を作っていきたい」

トリコロール(3つの色)が特徴のKNUの旗

トリコロール(3つの色)が特徴のKNUの旗

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