ビールを飲んで難民を支援しよう! クラフトビール「レフュージーエール」がクラファンで先行発売

田渕さん(左)とテグラさん(右)。ケニア・ナイロビ郊外にあるテグラ・ロルーペ・スポーツトレーニングセンターで田渕さん(左)とテグラさん(右)。ケニア・ナイロビ郊外にあるテグラ・ロルーペ・スポーツトレーニングセンターで

民族紛争や迫害により難民となった選手を応援するビール、その名も「レフュージーエール」。このビールを企画・販売するのが、スポーツビジネスに長年かかわってきた田渕陽さんだ。田渕さんはレフュージーエールの売り上げの一部をスーダンや南スーダンの難民選手が所属する長距離トラックチームに寄付。トイレの改装や食費にあててもらおうと企画する。「ビールを楽しく飲みながら、難民アスリートを支援できれば」と語る。

難民選手団はないほうがいい

田渕さんはウガンダのプロサッカーチームやBリーグ(男子プロバスケットボールリーグ)のクラブで働くなど、これまでスポーツビジネスの現場で活躍してきた。

そんな田渕さんが難民選手に興味をもったのは昨夏の東京オリンピックの時だ。開会式でギリシャに次いで2番目に入場した難民選手団。田渕さんはそれを見てこう思った。

「祖国を追われた人たちが選手としてオリンピックに出られるのは素晴らしい。けれどもそもそも難民がいるから難民選手団を組織しなければいけない。スポーツの力で難民をなくすことはできないか」

田渕さんはその後、スポーツ関係者を通じてケニア人の女性ランナー、テグラ・ロルーペさんと知り合った。ロルーペさんは1998年と1999年に当時のマラソンの世界記録を打ち立てた伝説のオリンピアン。シドニーオリンピック金メダリストの高橋尚子選手のライバルでもあった。

ロルーペさんは現在、難民となったスーダン人と南スーダン人の長距離選手のためにナイロビ近郊でトレーニング施設「テグラ・ロルーペ・スポーツトレーニングセンター」を運営する。思い立ったらすぐ行動する田渕さんはオリンピックが終わってすぐの2021年10月、テグラさんのトレーニングセンターを訪問した。

そこで見たのは練習に全力で取り組む難民選手の姿だった。

練習の前後はリラックスしているものの、いざ走るとなると真剣なまなざしで土のトラックを疾走する。田渕さんはウガンダの経験から、アフリカのスポーツ選手は楽しむことはできてもつらいことに全力で打ち込むことが苦手との印象をもっていた。だが難民選手らは逆境をばねに、ひたむきに練習していた。

テグラ・ロルーペ・スポーツトレーニングセンターからは3人の難民選手が東京オリンピックに出場した。彼らは現在、カナダに留学しながら最先端のトレーニングを積んでいる。難民選手らはここで良い記録を出せば、アスリートとしてキャリアアップができることを知っているのだ。

田渕さんは一方、難民選手らが劣悪な環境で生活しているところを目の当たりにした。飲料水やシャワーなどの生活水は雨水をタンクにためて使っていた。トイレには便座がなく、ひどく汚れていた。

食事環境もアスリートとは思えないものだった。練習後に食べるのはパンだけ。田渕さんが訪れた日の夕食は、ウガリ(トウモロコシの粉で作るケニアの主食)にタマネギの炒め物だけだった。

「難民となった選手のために食事や衛生環境を整備し、ランナーとして成功する手助けをしたい」。こう思った田渕さんは、スポーツビジネスの経験を生かし、資金調達することを決意する。

トレーニングセンターの外を走る難民の選手たち

トレーニングセンターの外を走る難民の選手たち

トレーニングセンターにあるトイレ。便座はなく、汚い

トレーニングセンターにあるトイレ。便座はなく、汚い

トレーニングセンターの中にあるキッチンの棚。種類は少なく、炭水化物に偏った食材が並ぶ

トレーニングセンターの中にあるキッチンの棚。種類は少なく、炭水化物に偏った食材が並ぶ

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