世銀やドイツ銀行が土地収奪に加担? グローバル・ウィットネスが告発

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資源問題を監視するNGOのグローバル・ウィットネスは、世界銀行とドイツ銀行から資金援助を受けたベトナムのゴム製造会社が東南アジアで土地収奪に関与している、と告発した。アルジャジーラが5月13日、「世界の金融機関はベトナムの土地収奪とつながっている」と題した記事を掲載し、この問題を取り上げた。

グローバル・ウィットネスが名指しで批判したのは、Hoang Anh Gia Lai(HAGL)とベトナム・ラバー・グループ(VRG)のベトナム企業2社。両社は、政府の取り巻きと関係をもつ子会社を使って、カンボジアとラオスにゴム農園を開拓するため、貧しい住民たちを立ち退かせているという。

同NGOによると、カンボジアでは120万ヘクタール以上の土地がゴム農園にリースされている。これに伴い2003年以降、40万人以上の住民が土地を失った。「カンボジアとラオスの政府は、人権や環境を守る法律を無視し、多くの土地をゴム農園に割り当てている」とNGOは糾弾。両国政府に対し、HAGLとVRGとの取引をやめるよう働きかけている。

120万ヘクタールという数字は、日本の四国の面積のおよそ65%に相当するほど広大だ。カンボジアの国土は1810万ヘクタールだから、NGOが主張するこの数字が確かであれば、国土の6%がゴム農園ということになる。

こうした事態が起こる背景には、隣国・中国での旺盛なゴム需要がある。中国では経済成長に伴い、自動車のタイヤをはじめとするゴム製品の需要が急拡大。千載一遇のビジネスチャンスをものにしようとするゴム製造会社が農園開発に乗り出しているといわれる。

グローバル・ウィットネスの告発に対してHAGLは、現地の法律を順守している、と反論。HAGLグループのドアン・グエン・ドゥック会長は「この“告発”にとても驚いている。内容はすべてでっち上げで、悪口でしかない。グローバル・ウィットネスがわれわれと面会もせず、また一緒に仕事することもなく、こうした“告発”をすることに不満を感じる」とロイターに語った。

一方のVRGはコメントを出していない。

グローバル・ウィットネスがとくに問題視するのは、国際金融機関がこうした土地収奪に間接的にかかわっていることだ。

ドイツ銀行は、HAGL、VRG両社に対して数百万ドル(数億円)相当の株を保有している。また、世銀グループのひとつで、途上国の民間企業への融資や投資を担う国際金融公社(IFC)はHAGLに出資している。

グローバル・ウィットネスは、ドイツ銀行とIFCに対し、HAGLとVAGが6カ月経っても人権と環境の基準を順守しなかった場合、両社へ投じた資金を引き上げるよう要請している。ただドイツ銀行は、両社へ出資する前にデュー・デリジェンス(適正評価)を実施している、と回答。IFCはコメントしていない。

国際金融機関・ゴム製造会社とNGOの主張は真っ向から対立している。