ケニア下院選の注目はキベラ選挙区、「現職」「校長」「サッカーのスーパースター」が三つ巴

オレロ氏の選挙行進に集まった有権者。選挙運動としてナイロビ・キベラの中を行進するオレロ氏。支持者をはじめ数万人が集まった。オレロ氏は、柏レイソルでプレーし、2020年にJリーグの得点王になったマイケル・オルンガ選手の恩人でもある

“ケニアの三浦カズ”も参戦

この選挙で因縁深いのが、オレロ氏が支えた選手のひとり、マクドナルド・マリガ氏が同じキベラ選挙区で出馬していることだ。マリガ氏はかつてセリアAのパルマやインテル・ミラノに所属したケニアサッカー界のスーパースター。守備的ミッドフィールダーで、長友佑都選手ともチームメイトだった。ケニア人として初めてヨーロッパ・チャンピオンズリーグにも出場した。“ケニアの三浦カズ”のような人物だ。

2019年に引退してからは政治家に転身。同年のキベラの下院議員の補欠選挙に出馬したものの、1万1230票にとどまり、2万4636票を獲得したイムラン氏に大敗した。マリガ氏は今回の選挙では、現副大統領で大統領選に出馬するウイリアム・ルト氏が率いる政党「統一民主同盟(UDA)」の公認を受けて出馬する。

マリガ氏の友人で、オレロ氏が校長を務める高校に一緒に通っていた男性はこう話す。

「(マリガ氏との)友情からマリガ氏の選挙活動を手伝っているけれど、私はいまだにオレロ氏を尊敬している。どちらかひとりを選ばないといけないのは苦しい」

選挙戦は、現職のイムラン氏とODMの後押しを受けるオレロ氏の2人が優位に進めている。マリガ氏は苦戦中。だがキベラでマリガ氏を推す声も多い。

マリガ氏を支持する女性は「他の候補はケニア政府からお金をもらって、それをキベラにもってくるだけ。だがマリガ氏は世界的に知名度がある。さまざまなところから資金を獲得して、キベラの経済を回すことができる」と期待する。

キベラ住民の協同組合「ムーンガノ・ワ・ワナビジジ」の代表で、キベラの政治に詳しいエゼキエル・レマ氏は今回のキベラ選挙区の下院選挙をこう見る。

「2019年は、ODMが全面支援したイムラン氏が、マリガ氏に大勝した。だがイムラン氏がODMの公認から外れたいま、イムラン氏の票が割れることは必至。そうなるとマリガ氏にもチャンスがある。誰が勝ってもおかしくない」

ケニア総選挙の投票日は8月9日。大統領から上下両院議員、郡知事、郡議会議員までを選ぶ。

マリガ氏の選挙ポスター。黄色はUDAのイメージカラーだ

マリガ氏の選挙ポスター。黄色は統一民主同盟(UDA)のイメージカラーだ。マリガ氏は、セリアAとスペインリーガで初めてプレーしたケニア人。ケニアサッカー界のスーパースターだ

投票用紙の書き方について説明するポスター。ケニアの総選挙では、下院議員だけでなく、大統領や知事など合計6つのポストを決める

投票用紙の書き方について説明するポスター。ケニアの総選挙では、下院議員だけでなく、大統領や知事など合計6つのポストを決める

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