ケニア下院選の注目はキベラ選挙区、「現職」「校長」「サッカーのスーパースター」が三つ巴

オレロ氏の選挙行進に集まった有権者。選挙運動としてナイロビ・キベラの中を行進するオレロ氏。支持者をはじめ数万人が集まった。オレロ氏は、柏レイソルでプレーし、2020年にJリーグの得点王になったマイケル・オルンガ選手の恩人でもある

5年に1度の総選挙があす8月9日に迫るケニア。注目は、アフリカ最大のスラムがあるナイロビ郡のキベラ選挙区の下院議員選挙だ。最大野党の公認を外された現職議員、代わりに同党の公認を得た高校の元校長、その教え子でケニアサッカー界のスーパースターの三つ巴の戦いとなっている。

現職議員がまさかの予備選敗退

キベラ選挙区が大接戦となった理由は、キベラ選挙区の現職の下院議員べナード・オコス・イムラン氏が最大野党「オレンジ民主運動(ODM)」の公認から外れたからだ。ただODMは今回の選挙では、ウフル・ケニヤッタ現大統領率いる政党ジュビリーと政党連合「アジミオ・ラ・ウモジャ」を組む。いま最も勢いに乗る政党だ。キベラにも多くの支持者をもつ。

ODMは下院議員選の候補者を予備選挙で選ぶ。4月22日に実施されたキベラ選挙区の予備選でイムラン氏は負けた。元校長のピーター・オチエン・オレロ氏より約600票少ない2739票だった。この結果、現職議員だが、ODMの公認を失った。

これに怒ったのがキベラの住民たちだ。キベラの住民は、イムラン氏が公認から外れたことに抗議するデモをキベラで実施。イムラン氏はその声にこたえ、無所属での出馬を決意した。

イムラン氏の選挙運動を支えるチームのメンバーのひとり、アブドール・アブバカーさんはこう話す。

「イムラン氏は学校を建てたり、奨学金の制度を立ち上げたり、キベラのためにこの2年間頑張ってきた。キベラの住民はそれを知っている。今回もイムラン氏が勝つ」

イムラン氏は選挙戦が始まって以来、毎日キベラに入りしてきた。「8月9日は重要な日だ。みんな(有権者)には正しい判断をしてほしい」と有権者に訴えかける。

Jリーグ得点王の恩人が出馬!

ODMの公認を勝ち取ったオレロ氏は、キベラの近くにあるランガタ高校やアッパーヒル学校で校長を務めたこともある教育者だ。2019年のODMの予備選ではイムラン氏に敗北したが、今回は勝利した。

オレロ氏は8月5日、キベラで数万人を巻き込んだ大規模な行進をした。アフリカのポップなミュージックが流れるスピーカーを何台も積んだトラックと、オレロ氏を乗せた車の周りを何十台のバイクが取り囲む。人々がそれに群がりながら、キベラ全域を練り歩いた。オレロ氏は車の上から顔を出して終始、有権者に手を振っていた。

ケニア高校スポーツ連盟の会長を長年勤めたオレロ氏。スポーツの才能はあるが、家庭が貧しくてスポーツが強い高校に進学できなかった子どもたちに奨学金をポケットマネーからねん出。子どもたちの夢をかなえるようサポートしてきた。

柏レイソルでプレーし、2020年にJリーグの得点王になったマイケル・オルンガ選手。イングランドプレミアリーグのサウサンプトンやトットナムで活躍したビクター・ワニャマ選手。ビクター選手の妹で、バスケットボールのスペインリーグでもプレーしたマーシー・ワニャマ選手。彼らはすべて、オレロ氏が才能を見出した選手たちだ。

ナイロビにあるキベラスラムで街頭演説をするイムラン氏。

ナイロビにあるキベラスラムで街頭演説をする現職下院議員のイムラン氏。オレンジ民主運動(ODM)の公認を失ったため、無所属として出馬。厳しい戦いが続く

イムラン氏の話を熱心に聞くキベラの住民ら

イムラン氏(中央)の話を熱心に聞くキベラの住民ら

オレンジ色のODMの帽子を被って、有権者に訴えるオレロ氏

オレンジ色のODMの帽子を被って、有権者に訴えるオレロ氏

1 2