ケニア大統領選が法廷闘争へ、破れたオディンガ氏「茶番だ」と結果認めず

最後の選挙集会で車の窓から姿を見せるオディンガ氏(ナイロビ)首都ナイロビで開いた最後の選挙集会で車の窓から姿を見せるオディンガ氏(撮影:笹田健史)

ケニアの大統領選で敗れたライラ・オディンガ氏は8月16日、新大統領の発表を「茶番だ」とし、選挙結果を受け入れないとの声明を出した。22日までに、最高裁判所に異議申し立てをするとみられる。独立選挙区割り委員会(IEBC)のワフラ・チェブカティ委員長は15日、新大統領としてウイリアム・ルト氏の当選を発表したが、副委員長を含む4人の委員がこれに異議をとなえていた。

「今回の選挙結果は法的根拠がない。司法の場で破棄されなければならない。無効だ」。15日のルト氏の大統領当選の発表を受け、オディンガ氏は、自身が率いる政党連合「アジミオ・ラ・ウモジャ」の集会でこう発言した。今後の方針については明言しなかったが、1週間以内に最高裁に異議申し立てをするとの見方が大勢だ

オディンガ氏の発言の根拠となっているのが、7人のIEBCの委員のうち4人がルト氏の当選に疑念をもっていること。ジュリアーナ・チェレラ副委員長は16日、ルト氏が獲得した50.49%の得票数を「間違った集計」と記者会見で断言。投票総数、有効投票数、無効票集が明確でないこと、チェブカティ委員長が当選発表したときにはまだ一部の選挙区の投票数が確定していなかったことを理由に「私たちは、ルト氏が当選したとする最終フォームの作成のプロセスが不明確と結論づけた。(ルト氏が当選したという)結果はチャブカティ委員長ひとりの考えに基づくもので、IBECを代表するものではない」と述べた。

これに対して新大統領に選ばれたルト氏は、4人の委員の異議申し立ては法的拘束力がないとのスタンスだ。「4人の委員の姿勢は(大統領当選の)発表の正当性を脅かすものではない。なぜなら憲法の規定はとてもはっきりしている。選挙管理官(チェブカティ委員長)が結果を発表する権限をもっている」

チャブカティ委員長は17日、4人の委員が15日の発表直前に再選挙にするよう迫ってきたことを認めたうえで「私は、憲法に基づき、各投票場の集計をもとに大統領選の結果を発表しただけだ」と述べた。

選挙結果をめぐり世論が分断するケニア。西部の都市キスムや首都ナイロビのスラムでは発表当初、タイヤを燃やし道路をブロックするなどの抗議行動が起きた。だが16日以降は平静を取り戻した。

これはオディンガ氏の発言が大きく影響している。オディンガ氏は16日、引き続き平静でいるよう国民に呼びかけたのだ。

加えて、司法に対する国民の信頼も暴動が起きるのを抑えている。2017年の前回の大統領選でも、有力候補だったオディンガ氏は選挙結果に対して最高裁に異議申し立てをした。これを受けて最高裁は「選挙の無効」を発表し、再選挙となった(オディンガ氏は落選)。

オディンガ氏の支持者で、キベラスラムでコミュニティースクールを運営するコリンズ・オリドさんは「我々にはまだ、裁判というカードが残っている。他のオディンガ支持者もそれをわかっているから大きな暴動にはならない」と語る。

ナイロビのキベラで見つけた、選挙前に描かれた平和を祈る壁画(撮影:笹田健史)

ナイロビのキベラで見つけた、選挙前に描かれた平和を祈る壁画(撮影:笹田健史)

ナイロビの発展に取り残されるキベラスラム(撮影:笹田健史)

ナイロビの発展に取り残されるキベラスラム(撮影:笹田健史)