文民出身のエジプト大統領を軍が追放、サウジとシリアは支持・英米は懸念

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アラブの春で2012年6月にエジプト初の文民大統領となったモルシ大統領をエジプト軍が追放したことを受け、アルジャジーラは7月4日、各国・地域の反応をウェブサイトに掲載した。アラブ諸国からは、エジプト軍の行動を支持する声が相次いだ。欧米諸国は、「クーデター」という言葉こそ使わなかったものの、強硬的な軍の介入を懸念。エジプトに民主主義が一刻も早く回復することを望んでいる。

<サウジアラビア>

サウジアラビアのアブドラ国王は3日、エジプトの暫定大統領に就任する最高憲法裁判所のマンスール長官に祝電を送った。「サウジアラビア国民を代表して、マンスール長官が、歴史的に重要な時期にエジプト大統領に就くことをお祝いする。われわれのきょうだいであるエジプト国民の望みがかなえられるために、マンスール長官が責任を全うできるよう、われわれは神に祈る」

<シリア>

シリアのアサド大統領は3日、エジプトの反政府運動を称賛したうえで、「軍によるモルシ大統領の追放は“イスラムの政治利用”の終焉を意味する。政治や派閥の利益に宗教を使おうとした者(「ムスリム同胞団」出身のモルシ大統領を指す)の結末がこれだ。エジプト国民は、ムスリム同胞団のうそを見抜いた」と述べた。ムスリム同胞団は、スンナ(スンニ)派のイスラム原理主義組織。

<UAE

アラブ首長国連邦(UAE)政府は、エジプトの今回の体制変革を歓迎。エジプト軍の行動を称賛した。国営通信社WAMによると、UAEのアブドラ外相は「エジプトにとって困難な時期が続くが、エジプト国民は乗り越えられる、と信じている。エジプト軍は再び、エジプトが法治国家でいられるよう、“庇護者”であり、“強固な盾”だということを証明した」と話した。

<EU

欧州連合(EU)のアシュトン外務・安全保障政策上級代表は4日、「(軍、モルシ大統領の)両陣営に対して、民主主義のプロセスに戻るよう要請する。自由で公正な大統領・議会選挙を実施し、(軍が停止を宣言した)憲法を承認するよう求める」とコメントした。

<フランス>

フランスのファビウス外相は3日、軍が実施するとした大統領選と議会選挙の動向に注目している、と述べた。「フランス政府は、国内の平和、多元的共存、個人の自由、民主主義移行の成果などを尊重した選挙の日程が決まることを望んでいる。この結果、エジプト国民は、自由に、自らのリーダーと将来を選ぶことができる」と付け加えた。

<英国>

英国のヘイグ外相は「民主主義のシステムの中で、紛争の解決手段として軍が介入することを英政府は支持しない。長い目で見れば、エジプト国民が求める安定と繁栄は、民主主義のプロセスと承認された政府のみでしか成しえない」と指摘。すべての政党に対し、選挙が近く実施されることを踏まえ、エジプトの民主主義への移行を回復・再開させるために、リーダーシップとビジョンを示すことを求めた。

<米国>

米国のオバマ大統領は「モルシ大統領を退陣させたエジプト軍の決定を深く憂慮する。困難が伴わない形での民主主義への移行はない。一般のエジプト国民が求めているのは、誠実で、能力をもち、国民を代表する政府だ」との声明を発表。民政に早急に戻るよう要請した。

オバマ大統領はまた、「米国とエジプトの長年のパートナーシップは、共通の利益と価値観に基づくもの。エジプトの民主主義への移行を成功させるようエジプト国民と努力していく」とコメント。ただその一方で、米政府は、クーデターにかかわった政権は米国からの援助を受ける資格はないとの方針を掲げている。今回のケースがクーデターに当たるかどうかは明言していない。