「ゲイに死刑を!」、イスラム団体の法案をマラウイ政府が否決

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アフリカ南東部のマラウイで同性愛行為に死刑を科す法案が出されていた問題で、同国のファハド・アサニ法相はこのほど、これを否決した。ニャサ・タイムスが2月19日付記事で報じた。

この法案を提出したのはマラウイ・イスラム協会。マラウイの刑法は、同性愛行為(同性同士のみだらな行為や自然の摂理に反する行為)に最大14年の禁固刑を科しているが、イスラム協会はこれでは不十分として厳罰化を求めていた。同協会のシエク・サルミム・オマール・イドルス事務局長は「極刑のみが同性愛を取り除く唯一の手段だ」と訴えていた。

これに対してアサニ法相は「同性愛行為に厳罰を科すことは国際的な批判につながり、国際社会から援助が来なくなる可能性もある。民主主義国家として同性愛者への嫌悪を促すことも、またゲイに死刑を科すこともできない」と述べた。

国連エイズ合同計画(UNAIDS)、マラウイ弁護士協会、マラウイの人権擁護団体は、同性間のセックスを禁止する憲法違反の刑法規定を覆すよう高等裁判所に求めている。マラウイでは高裁が違憲性を判断できる。

3団体はまた、同性愛行為の罪で服役中の男性3人の有罪判決の撤回も求めている。3人は2011年、10~14年の禁固刑を言い渡された。政府と裁判所はこの件の司法手続きを止めたままにしている。

マラウイ政府によると、同国には死刑制度はあるものの、1994年の民主化以降、死刑を一度も執行したことはないという。アサニ法相は「マラウイは民主主義国家。少数派に死刑を科すことはできない。3月に予定される総選挙で、同性愛を許すかどうかについて国民は考慮して投票するだろう」と述べた。ちなみにアサニ法相は敬虔なイスラム教徒だ。

10年の調査によると、マラウイ国民に占めるイスラム教徒の割合はわずか12%。約85%のキリスト教徒と比べ圧倒的に少ない。しかし両者が宗教的な理由で対立を起こすことはまれだ。たとえばバキリ・ムルジ元大統領は少数派のイスラム教徒。94~04年の2期10年にわたって国家元首を務めた。これは国民が宗教にかかわらず投票した結果ともいえる。

マラウイ人道主義協会のジョージ・シンドゥワ理事は「一部のイスラム教徒が同性愛に対する嫌悪を促していることは受け入れられない。同性愛者を『普通の人間』として尊厳をもって扱うべきだ。同性愛者に死刑を科すというのは、イスラム教徒だから死刑を科すと言っているのと同じ。イスラム団体はコーランではなく、憲法を尊重すべき」と批判した。

マラウイでは、伝統的(法的なものではない)な結婚式を09年に挙げた同性愛者の男性2人が起訴されたことを発端に、同性愛行為を違法とするかどうかの議論が過熱した。ジョイス・バンダ大統領は12年3月、同性愛行為を罰する法律を廃止すると誓い、暫定措置として同年12月に同性愛行為を罰する刑法規定の効力を停止させた。だがキリスト教徒を中心とする団体の激しい抵抗にあい、数日後に結局、その規定を復活させている。(マラウイ・リロングウェ=谷口香津郎)