コスタリカ産コーヒーを協力隊OG3人が輸入販売、仕入れ額の2割は障がい者支援に

障がい者自立支援センター「モルフォ」のメンバーたち(コスタリカ南部のペレスセレドンで撮影)障がい者自立支援センター「モルフォ」のメンバーたち(コスタリカ南部のペレスセレドンで撮影)

コスタリカ人のプレゼンに感動

ナチュリカを経営するのは、代表の大島さんのほか、松本静香さんと日高夏希さんの2人。3人とも、2016~18年の2年間コスタリカで活動した同期隊員だ。

モルフォは松本さんの配属先(職種はマーケティング)だった。大島さんもモルフォに何度も遊びに行った。「モルフォの第一印象は、みんな本当に明るくてバイタリティがあること。障がいの有無にかかわらず意思と行動力さえあればなんでもできるんだと考えさせられた」

大島さんたちがナチュリカを2020年に立ち上げた理由は、モルフォに対するJICAの資金援助が2023年4月で終わるとわかっていたからだ。大島さんは「モルフォが運営資金を自力で得る手伝いをしたいと思った。(ナチュリカが払うお金がどれぐらい助けになるのか)勝負はこれから」と意気込む。

その思いに火を着けたのが、モルフォのコスタリカ人スタッフ2人が電動車いすの修理の仕方を学びに2019年に来日したことだ。大島さんは通訳をしながら3日ほど2人と一緒に過ごした。

濃密だったこの3日間について大島さんはこう振り返る。

「研修の最後のプレゼンで、コスタリカ人の2人が『自分たちが車いすを作ることで、引きこもっている障がい者たちが少しでも出歩けるようにしたい。障がいがあっても自分の意思で生きられる社会を作りたい』と熱く語った。それを聞いて、ものすごく感動した。彼らを手伝いたい。日本にいてもコスタリカとつながっていたいと思った」

ナチュリカが手がけるコーヒーの輸入販売はもともと、メインストリーム協会がやっていたものだ。「ただメインストリーム協会にとってコーヒー販売は本業ではない。だからあまり規模を大きくできない。私たちが引き継ぐことで、拡大していきたい」と大島さんは前を向く。

起業資金はCFで146万円調達

起業の資金を集めるため、大島さんたちは2020年10月にクラウドファンディング(CF)を実施した。目標額の70万円はわずか4日で達成。最終的にはおよそ146万円が集まった。

「本当にびっくりした。きちんと信念を持ち、それを伝えれば、応援してくれる人が現れるんだと思った」(大島さん)

大島さんの本業は作業療法士だ。そのスキルを生かし、隊員時代はコスタリカ東部のグアシモにある特別支援学校で活動した。学校で捨てられていた牛乳パックやダンボールを使って、手を動かす補装具やスプーンを持つための補助ベルトなどを作り、使い方を子どもに教えた。

今は都内の訪問看護ステーションで週3日働く。「コスタリカから帰って、今の勤務先に就職するまでの半年間は、何をしたいのかわからず燃えつき症候群だった。でもきっとそのうち(本業とは別に)何かやりたくなるだろうなと思って時間を空けておいた」(大島さん)

ナチュリカの事業は上り調子だ。2021年10月から2022年8月までの売り上げは200万円ほど。前年度(2020年10月~2021年9月)に比べて倍近くに増えた。コロナ禍による行動制限がなくなり、イベントに出店できるようになったのが大きいという。

「だけど、続けていくためにはもっと収益を上げる仕組みを考えないといけない。始めた以上は中途半端にはできない」。大島さんはこう決意をのぞかせる。

0907協力隊4枚目

コスタリカの独立記念日(9月15日)に障がい者たちと街を練り歩く

 

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